隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

歴史

津田梅子 科学への道、大学の夢

古川安氏の津田梅子 科学への道、大学の夢 を読んだ。以前から不思議に思っていたのだが、明治政府は5人の少女をアメリカ留学に送り出したが、これは明治政府の中の誰の案なのだろう?どういう組織がかかわっていたのだろう?そして、その目的あるいは期待し…

黒人と白人の世界史

オレリア・ミシェルの黒人と白人の世界史――「人種」はいかにつくられてきたか (原題 Un monde en nègre et blanc)を読んだ。原題の意味するところは「黒と白の世界」で、日本語に翻訳すると直接的過ぎるような表現になっている。それからすると日本語のタイ…

刀伊の入寇-平安時代、最大の対外危機

関幸彦氏の刀伊の入寇-平安時代、最大の対外危機を読んだ。平安時代に対外勢力からの侵略があったという事、そしてそれが「刀伊の入寇」と呼ばれていたという事は知っていたのだが、具体的な内容はよく知らなかった。更に、何かの小説で、事件があったのは時…

荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで

伊藤俊一氏の荘園-墾田永年私財法から応仁の乱までを読んだ。この本を読む前は、荘園の始まりが墾田永年私財法からというのは分かっていたが、ではいつまで続いたのかというのはよくわかっていなかった。室町時代はまだあったのだろうが、戦国時代にはもうな…

百姓から見た戦国大名

黒田基樹氏の百姓から見た戦国大名を読んだ。災害や凶作が起きればなんとなく飢饉になると思っていたが、実はそうではなく、そのような事が起きた時に、人々が食料を獲得する能力が欠如しているとき、更に言えば、食料を獲得できない人々に食料が行き渡る社…

統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀

デイヴィッド・サルツブルグの統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀 (原題 The Lady Tasting Tea)を読んだ。以前統計の歴史 - 隠居日録を読んだのだが、思っていたような本ではなかったので、それらしい本はないかと探していて見つけたの…

密告者ステラ ~ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女

ピーター・ワイデンの密告者ステラ ~ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女(原題 Stella One Woman's True Tale of Evil, Betrayal, and Survival in Hitler's Germany)を読んだ。この本はタイトルにあるように密告者の物語で、第二次世界大戦中にベルリンに潜伏…

信長徹底解読 ここまでわかった本当の姿

信長徹底解読 ここまでわかった本当の姿を読んだ。織田信長と言えば日本の歴史上の武将でも有名な人物で、知らない人はいないだろう。しかし、実際の信長の行ったことと物語の中での信長とがなんとなく混然一体となっていて、どこまでが歴史としてわかってい…

絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている

左巻健男氏の絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできているを読んだ。タイトルに「化学入門」とついているが、入門書というよりは人類の歴史の中での化学的な発見とかその成果のエピソード集といった感じの本だ。すでに知っていることもあったが、知らない…

日本神判史

清水克行氏の日本神判史を読んだ。有罪であるか無罪であるかを神に問い判決を下すのが神判であり、かってこの日本でもそのような事が行われていた。日本書紀にも竹内宿禰が「深湯」を行ったという記録があり、これ以外にも日本書紀に2件あるという。「深湯」…

古代日本の官僚-天皇に仕えた怠惰な面々

虎尾達哉氏の古代日本の官僚-天皇に仕えた怠惰な面々を読んだ。タイトルの通り、古代から中世の日本の朝廷には実は怠惰な官人が多くいたという内容なのだが、それにもまして、実は第一章の「律令官人とは何か」が面白かった。 陰位 まず第一に、今まで、朝廷…

幕末江戸と外国人

吉崎雅規氏の幕末江戸と外国人を読んだ。江戸時代にいつ頃から外国人が住んでいたのかに関しては正直なところよく知らなかった。安政五(1858)年六月十九日日米修好通商条約が結ばれるが、この条約の第一条に、 合衆国の大統領は江戸に居留するヂプロマチーキ…

統計の歴史

オリヴィエ・レイの統計の歴史(原題 Quand le monde s'est fait nombre)を読んだ。日本語のタイトルは統計の歴史となっているが、フランス語の原題は「世界が数になったら」という意味で、こちらの方が内容をよく表していると思う。というのも、統計に関して…

中世ヨーロッパ ファクトとフィクション

ウィンストン・ブラックの中世ヨーロッパ ファクトとフィクション(原題 The Middle Ages: Facts and Fictions)を読んだ。この本が指摘するように、確かに「中世暗黒時代」というイメージは自分も持っていた。教会の権力が強大で何もかも支配して、一般民衆は…

「違和感」の日本史

本郷和人先生の「違和感」の日本史を読んだ。本書は産経新聞に連載中の日本史ナナメ読みをまとめたもの。これを読んでいると、本郷先生色々とストレスが溜まっているのじゃないかと心配してしまうような記述がいくつかあった。それはそれとして、本書の中で…

日本史の賢問愚問

中里裕司氏の日本史の賢問愚問を読んだ。本書は山川出版社の広報誌「歴史と地理」に連載されていた「賢問愚問」をまとめたものだ。 承平・天慶の乱 私が子供の頃は承平・天慶の乱と教わった記憶がかすかにあるのだが、最近はそのようには呼ばないで、天慶の…

歴史を変えた10の薬

トーマス・ヘイガーの歴史を変えた10の薬 (原題 TEN DRUGS)を読んだ。本書は著者の選定基準に基づいて歴史上の薬から10個を掘り下げて、その開発の歴史をまとめたものだ。 天然痘と人痘・牛痘 天然痘とといえばかっては恐ろしい伝染病で、致死率の高さと、仮…

「関ヶ原」の決算書

山本博文先生の「関ヶ原」の決算書を読んだ。山本先生の多分最後の本だと思う。本書は決算書と書かれているが、決算書というのはちょっと微妙な表現だと思う。というのも、歴史的な史料として、各大名がどれぐらいの資金を関ヶ原の合戦に費やしたかは存在し…

戦国大名の経済学

川戸貴史氏の戦国大名の経済学を読んだ。本書は戦国時代を戦国大名の領国経営という観点から概説したものだ。ちょっと意外だったのは、寺社の方には収支を記録した帳簿が残っているのだが、戦国大名に関してはそのような帳簿は残っておらず、もともと存在し…

シュリーマン―黄金と偽りのトロイ

デイヴィッド・A・トレイルのシュリーマン―黄金と偽りのトロイ(原題 SCHLIEMANN of TROY: Treasure and Deceit)を読んだ。図書室のバシラドール - 隠居日録で知ったシュリーマンに関する本で、知らなかったとはいえ、結構驚きの内容だ。本書は大著だ。上下2…

砂と人類 いかにして砂が文明を変容させたか

ヴィンス・バイザーの砂と人類(原題 THE WORLD IN A GRAIN The Story of Sand and How It Transformed Civilization)を読んだ。この本を読む前は、砂漠化する大地と人類との攻防について書かれているのかと思ったが、それについても書かれていたが(第9章)、…

日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る

播田安弘氏の日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫るを読んだ。データを積み上げて、歴史的な出来事を分析して、考察する試みで、数値で裏付けをすることで、説得力を与えている。扱っているのは、元寇、秀吉の中国大返し、戦艦大和だ…

建国神話の社会史-虚偽と史実の境界

古川隆久氏の建国神話の社会史-虚偽と史実の境界を読んだ。建国神話とは日本書紀の巻第二神代下にある、天照大神が孫の瓊瓊杵尊を葦原の中つ国に降させ、その後その子孫の彦火火出見が即位して、神武天皇になったという伝説である。そして、その中に「一書に…

公家源氏―王権を支えた名族

倉本一宏 先生の公家源氏―王権を支えた名族を読んだ。公家源氏というのは倉本先生の造語のようで、学界ではまとめて「賜姓源氏」と呼ばれているが、これではいわゆる武家の源氏と区別がつかないので、この言葉を本書では使っているようである。この本は実に…

とてつもない失敗の世界史

トム・フィリップスのとてつもない失敗の世界史(原題 HUMANS A Brief History of How We F*cked It All Up)を読んだ。本書は我々人類が過去から未来にわたって犯してきた愚かしいミスをあげつらった本である。扱っている範囲は広範囲で、環境、外来種、独裁…

逆転のイギリス史 衰退しない国家

玉木俊明氏の逆転のイギリス史 衰退しない国家を読んだ。本書はイギリスの歴史について、特に経済の観点から記述した本なのだ。「逆転」とタイトルについているのは、世界の覇権がオランダからイギリスに移り変わっていたことをさしているのだろうが、その後…

「忠臣蔵」の決算書

山本博文先生の「忠臣蔵」の決算書を読んだ。本書では大石内蔵助が遺した「預置あずかりおき候そうろう金銀きんぎん請払帳うけはらいちょう」を基に元禄赤穂事件を考察している。この史料は討ち入りのために費やされた経費の入出金記録で、神奈川県箱根町に…

勝者なき戦争 世界戦争の200年

イアン・J・ビッカートンの勝者なき戦争 世界戦争の200年 (原題 The Illusion of Victory: The True Cost of War)を読んだ。本書の内容をを一言で表すならば、戦争による犠牲には、どのような観点から見ても、払うのに見合った価値を見出すことはできないと…

マネーの魔術史 支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか

野口悠紀雄氏のマネーの魔術史 支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのかを読んだ。この本は貨幣の歴史についての本で、サブタイトルにあるように、いかにして支配者がその価値を水増ししたのかということの説明だ。金融緩和とは貨幣の量を増やすことを意味…

気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年 (2)「江戸時代」

田家康氏の気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年の後半。前半はこちら。 江戸時代 寛永の飢饉 寛永十三(1636)年から旱魃による凶作の記録が出てくる。寛永十五(1638)年から寛永十八(1641)年にかけて、畿内から西日本にかけて家畜牛の大量死が記…