隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

巨神計画

シルヴァン・ヌーヴェルの巨神計画(原題 Sleeping Giants)を読んだ。本書は上下巻に分かれている。後に物理学者のローズ・フランクリンは十一歳の誕生日の日にサウスダコタ州の片田舎の森の中で穴に落ち、そこにイリジウム合金でできた強大な手を発見した。…

私たちはどこから来て、どこへ行くのか: 科学に「いのち」の根源を問う

ドキュメンタリー映画監督の森達也氏の「私たちはどこから来て、どこへ行くのか: 科学に「いのち」の根源を問う」を読んだ。本書は森氏が科学者と「私たちはどこから来て、どこへ行くのか」をテーマに対談した内容をまとめたものである。ただ、単に対談した…

彼女がエスパーだったころ

宮内悠介氏の彼女がエスパーだったころを読んだ。本書は不思議な味わいのある短編集になっている。収められているのは、「百匹目の火神」、「彼女がエスパーだったころ」、「ムイシュキンの脳髄」、「水神計画」、「薄ければ薄いほど」、「沸点」の六編だ。…

外来種のホント・ウソを科学する

ケン・トムソンの外来種のウソ・ホントを科学する(原題 Where Do Camels Belong?)を読んだ。今年の夏は日本でもヒアリが確認されて、外来生物のことがニュースに取り上げられることも多かった。外来生物というと、どうも不法外国人やら不法難民と関連させて…

あしたはひとりにしてくれ

竹宮ゆゆこ氏のあしたはひとりにしてくれを読んだ。主人公の月岡瑛人は東京都内の難関と言われている男子校の高校二年生。子供の頃から親を困らせることもなく育ってきて、「いいこ」で過ごしてきた。そんな瑛人はおばけに見られている感覚にとらわれていた…

慶安の触書は出されたのか

山本英二氏の慶安の触書は出されたかを読んだ。タイトルから推測するに、慶安の触書は出されなかったというのが筆者の主張であろうというのは読む前にわかってたが、では「慶安の触書」と呼ばれていたものは一体何だったのだろう?後世につくられた偽書なのだ…

QJKJQ

何かの折に面白そうな本を見つけたときは、だいたいamazonのほしいものリストに追加しておく。多数溜まってきたら、エクセルのシートにコピーする。ほしいものリストは全ての本がいっぺんに見られないからだ。本を読もうと思った時はだいたいそのエクセルの…

騙しの天才―世界贋作物語

桐生操氏の騙しの天才―世界贋作物語を読んだ。タイトルに「世界贋作物語」とついているので、美術品に関する贋作の話が収録されていると思ったのだが、実際は詐欺師・ペテン師の話が殆どで、美術品に関する贋作の話は、 フェルメールの贋作者 モナ・リザ盗難…

朝井まかて氏の眩を読んだ。NHKで葛飾北斎の娘応為をモデルにしたドラマを放送していて、面白かったので原作を読んでみた。NHKのドラマは75分ほどの時間なので、原作のほんの一部分を取り出して再構成をしたような印象だ。原作はお栄の結婚生活が破たんする…

一次史料にみる関ヶ原の戦い(改訂版)

高橋陽介氏の一次史料にみる関ヶ原の戦い(改訂版)を読んだ。本書は2015年に自費出版した「一次資料にみる関ヶ原の戦い」を増補・改定した本である。著者は一次資料を読む際の心がけとして、 関ヶ原の戦いが徳川と豊臣の戦いであるという先入観、あるいは関ヶ…

疾れ、新蔵

志水辰夫氏の「疾れ、新蔵」を読んだ。時代小説という体裁をとっているが、読んでみた印象では、どちらかというと冒険小説だと感じた。目指すは越後岩船の春日荘。主人公の新蔵は酒匂家での須河幾一郎の急死の方に接し、かねてから打ち合わせていた通り、江…

ゲームの王国

小川哲氏のゲームの王国を読んだ。このSF小説は一体どう理解すればいいのだろう? 本書は上巻・下巻に分かれており、上巻は約400ページ、下巻は約360ページの紛れもない大長編なのだが、上巻を読む限りは、これをSF小説と呼んでいいのだろうかと、疑問が湧い…

先生、それって「量子」の仕業ですか?

大関真之氏の「先生、それって「量子」の仕業ですか?」を読んだ。量子力学に興味があるが、難しい本を読んでも理解が追い付かないと思い、初心者向けの本を選んだのだが、あまりにも初心者向けで、あまり得るところがなかった。本の選択はなかなか難しい。興…

半席

本書には「半席」、「真桑瓜」、「六代目中村正蔵」、「蓼を喰う」、「見抜く者」、「役替え」の六編が収められている。実は表題作の半席は約定 - 隠居日録にも収められており、どういうことだろうと思っていたのだが、実は本作はその登場人物の片岡直人を主…

映画は撮ったことがない ディレクターズ・カット版

神山健治監督の映画は撮ったことがない ディレクターズ・カット版を読んだ。本書は以前に出版されていたものに、庵野秀明監督との対談を新たに収録し(その代り押井守監督・中島哲也監督との対談を割愛)し、映画を生む本棚を追加したものだ。神山監督はなんと…

励み場

青山文平氏の励み場を読んだ。「励み場」とは「励めば報われる仕事場」という意味である。本編は名子の青年が勘定書の普請役となり、そこから勘定支配に這い上がって、更に上を目指そうとしている姿を描いている。名子という言葉は本書を読むまで知らなかっ…

人間はなぜ歌うのか? -人類の進化における「うた」の起源

ジョーゼフ・ジョルダーニアの人間はなぜ歌うのか?(原題 Why Do People Sing? Music in Human Evolution)を読んだ。タイトルに「歌う」とあるが、これは現代的な意味での「歌う」、あるいは我々がイメージしている「歌う」とは若干異なったものだ。もっと原…

エクサスケールの少女

さかき漣氏のエクサスケールの少女を読んだ。何とか最後まで読んだが、「これは酷い」いうのが率直な感想だ。メモを取りながら読んで、気になった点を列挙する。これ以外にもあったが、多すぎるので、全てを書いているわけではない。 P10に「混信したかのよ…

ウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学

本川達雄先生のウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学を読んだ。本川先生と言えば、「ゾウの時間ネズミの時間」を昔読んで、非常に面白かった記憶があり、本書を手に取ってみた。本書もかなり面白かった。本書はいろいろな動物の体の仕組みや生態…

つまをめとらば

青山文平氏のつまをめとらばを読んだ。本作品は第154回直木賞受賞作品だ。短編集で、表題作の「つまをめとれば」の他に、「ひともうらやむ」、「つゆかせぎ」、「乳付」、「ひと夏」、「逢対」が収められている。今までの青山作品は、江戸幕府開闢から150年…

マツリカ・マハリタ

相沢沙呼のマツリカ・マハリタを読んだ。こちらはマツリカ・マジョルカの続編だ。本作では柴山祐希は二年生になっているが、マツリカは相変わらず学校に登校している様子もなく、廃ビルに住み着いている。柴山祐希の周りは少しずつ変わってきて、新たに高梨…

マツリカ・マジョルカ

相沢沙呼氏のマツリカ・マジョルカを読んだ。日常の謎のミステリー。高校一年の柴山祐希はある日、高校の隣にある廃ビルの四階の窓から女子高生が身を乗り出しているのを発見する。自殺なのか?と訝しみながら、その部屋を訪れると、年上と思しき女子高生がい…

心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで

キャスリン・マコーリフの心を操る寄生生物(原題 This Is Your Brain on Parasites)を読んだ。本書を一言でいうなら、我々の行動は寄生生物によってコントロールされているというのだ。本書は大きく2つに分かれる。 寄生生物が我々の生物の中で何をしている…

鬼はもとより

青山文平氏の鬼はもとよりを読んだ。主人公は浪人の奥脇抄一郎。表向きは万年青の商いをしているが、裏では諸藩に向けて藩札板行指南をしている。物語の前半は奥脇抄一郎が浪人する前のことが語られる。当時はある藩で馬廻り役をしており、剣に入れ込んでい…

かけおちる

青山文平氏のかけおちるを読んだ。本書は四つの駆け落ちの物語である。と言っても連作短編ではなく、長編小説だ。主人公は柳原藩執政阿部重秀だ。政阿部重秀は家業として鮭の種川に取り組んでおり、ようやくその結果が出たところであった。鮭の種川とは鮭が…

不道徳な見えざる手

ジョージ・A. アカロフ, ロバート・J. シラーの不道徳な見えざる手(原題 Phishing for phools)を読んだ。本書のまえがきの中に以下のようなことが書かれている。 でも競争力のせいで、ビジネスマンはどうしてもごまかしと詐欺をするようになり、おかげで私た…

約定

青山文平氏の約定を読んだ。本書は短編集で、「三筋界隈」、「半席」、「春山入り」、「乳房」、「約定」、「夏の日」の6編が収められている。本書の二編目に「半席」という作品が収められているが、寡聞にしてこの半席という言葉は知らなかった。 御家人か…

流水浮木 最後の太刀

青山文平氏の流水浮木 最後の太刀を読んだ。江戸時代の武士は家計の助けのためにいろいろな内職をしていた。鉄砲百人組の内職はツツジの栽培が有名であるが、本書ではツツジではなくサツキと書かれている。サツキはツツジの一種であるし、苗木で売っていたと…

敵討ちか主殺しか

佐藤雅美氏の物書き同心居眠り紋蔵シリーズ「敵討ちか主殺しか」を読んだ。このシリーズも非常に長く続いていて、本作で14作目だ。前作では驚いたことに別シリーズの登場人物蟋蟀小三郎が登場していて、今後も登場するのかと思ったら、本作には登場しなかっ…

白樫の樹の下で

青山文平氏の白樫の樹の下でを読んだ。以前遠縁の女 - 隠居日録を読んで、面白かったので他の作品にも手を出してみた。読み終えて、改めて文章がうまいと思った。江戸の町名、橋、川が文章中にちりばめられており、そこを実際移動しているかのような印象を受…