隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

映画は撮ったことがない ディレクターズ・カット版

神山健治監督の映画は撮ったことがない ディレクターズ・カット版を読んだ。本書は以前に出版されていたものに、庵野秀明監督との対談を新たに収録し(その代り押井守監督・中島哲也監督との対談を割愛)し、映画を生む本棚を追加したものだ。神山監督はなんと…

励み場

青山文平氏の励み場を読んだ。「励み場」とは「励めば報われる仕事場」という意味である。本編は名子の青年が勘定書の普請役となり、そこから勘定支配に這い上がって、更に上を目指そうとしている姿を描いている。名子という言葉は本書を読むまで知らなかっ…

人間はなぜ歌うのか? -人類の進化における「うた」の起源

ジョーゼフ・ジョルダーニアの人間はなぜ歌うのか?(原題 Why Do People Sing? Music in Human Evolution)を読んだ。タイトルに「歌う」とあるが、これは現代的な意味での「歌う」、あるいは我々がイメージしている「歌う」とは若干異なったものだ。もっと原…

エクサスケールの少女

さかき漣氏のエクサスケールの少女を読んだ。何とか最後まで読んだが、「これは酷い」いうのが率直な感想だ。メモを取りながら読んで、気になった点を列挙する。これ以外にもあったが、多すぎるので、全てを書いているわけではない。 P10に「混信したかのよ…

ウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学

本川達雄先生のウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学を読んだ。本川先生と言えば、「ゾウの時間ネズミの時間」を昔読んで、非常に面白かった記憶があり、本書を手に取ってみた。本書もかなり面白かった。本書はいろいろな動物の体の仕組みや生態…

つまをめとらば

青山文平氏のつまをめとらばを読んだ。本作品は第154回直木賞受賞作品だ。短編集で、表題作の「つまをめとれば」の他に、「ひともうらやむ」、「つゆかせぎ」、「乳付」、「ひと夏」、「逢対」が収められている。今までの青山作品は、江戸幕府開闢から150年…

マツリカ・マハリタ

相沢沙呼のマツリカ・マハリタを読んだ。こちらはマツリカ・マジョルカの続編だ。本作では柴山祐希は二年生になっているが、マツリカは相変わらず学校に登校している様子もなく、廃ビルに住み着いている。柴山祐希の周りは少しずつ変わってきて、新たに高梨…

マツリカ・マジョルカ

相沢沙呼氏のマツリカ・マジョルカを読んだ。日常の謎のミステリー。高校一年の柴山祐希はある日、高校の隣にある廃ビルの四階の窓から女子高生が身を乗り出しているのを発見する。自殺なのか?と訝しみながら、その部屋を訪れると、年上と思しき女子高生がい…

心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで

キャスリン・マコーリフの心を操る寄生生物(原題 This Is Your Brain on Parasites)を読んだ。本書を一言でいうなら、我々の行動は寄生生物によってコントロールされているというのだ。本書は大きく2つに分かれる。 寄生生物が我々の生物の中で何をしている…

鬼はもとより

青山文平氏の鬼はもとよりを読んだ。主人公は浪人の奥脇抄一郎。表向きは万年青の商いをしているが、裏では諸藩に向けて藩札板行指南をしている。物語の前半は奥脇抄一郎が浪人する前のことが語られる。当時はある藩で馬廻り役をしており、剣に入れ込んでい…

かけおちる

青山文平氏のかけおちるを読んだ。本書は四つの駆け落ちの物語である。と言っても連作短編ではなく、長編小説だ。主人公は柳原藩執政阿部重秀だ。政阿部重秀は家業として鮭の種川に取り組んでおり、ようやくその結果が出たところであった。鮭の種川とは鮭が…

不道徳な見えざる手

ジョージ・A. アカロフ, ロバート・J. シラーの不道徳な見えざる手(原題 Phishing for phools)を読んだ。本書のまえがきの中に以下のようなことが書かれている。 でも競争力のせいで、ビジネスマンはどうしてもごまかしと詐欺をするようになり、おかげで私た…

約定

青山文平氏の約定を読んだ。本書は短編集で、「三筋界隈」、「半席」、「春山入り」、「乳房」、「約定」、「夏の日」の6編が収められている。本書の二編目に「半席」という作品が収められているが、寡聞にしてこの半席という言葉は知らなかった。 御家人か…

流水浮木 最後の太刀

青山文平氏の流水浮木 最後の太刀を読んだ。江戸時代の武士は家計の助けのためにいろいろな内職をしていた。鉄砲百人組の内職はツツジの栽培が有名であるが、本書ではツツジではなくサツキと書かれている。サツキはツツジの一種であるし、苗木で売っていたと…

敵討ちか主殺しか

佐藤雅美氏の物書き同心居眠り紋蔵シリーズ「敵討ちか主殺しか」を読んだ。このシリーズも非常に長く続いていて、本作で14作目だ。前作では驚いたことに別シリーズの登場人物蟋蟀小三郎が登場していて、今後も登場するのかと思ったら、本作には登場しなかっ…

白樫の樹の下で

青山文平氏の白樫の樹の下でを読んだ。以前遠縁の女 - 隠居日録を読んで、面白かったので他の作品にも手を出してみた。読み終えて、改めて文章がうまいと思った。江戸の町名、橋、川が文章中にちりばめられており、そこを実際移動しているかのような印象を受…

経済で読み解く明治維新

上念司氏の経済で読み解く明治維新を読んだ。経済で読み解く織田信長 - 隠居日録が面白かったので、こちらも読んでみた。実際の出版順はこちらの方が先だ。この本もそれなりに面白かったのだが、織田信長ほどは面白くなかった。 疑問に思ったところ P45に財…

生物はウイルスが進化させた

武村政春氏の生物はウイルスが進化させたを読んだ。本書に書かれているのは近年発見された巨大ウイルスから得られて知見とそれらの知見から筆者らが導き出した仮説である。まず、前半部分は巨大ウイルスのことが述べられている。 巨大ウイルス ウイルスなと…

戦国大名の「外交」

丸島和洋氏の戦国大名の「外交」を読んだ。ここで外交の部分が「外交」となっているのは、混乱を避けるためで、戦国期の大名を一つの国家とみなして、大名同士の交渉を外交としているからで、戦国大名が外国の国と独自に行っていた外交の話ではないからであ…

経済で読み解く織田信長

上念司氏の『経済で読み解く織田信長 「貨幣量」の変化から宗教と戦争の関係を考察する』を読んだ。この本は非常に興味深い本だった。本書は約290ページほどあるのだが、織田信長が登場するのは224ページ目からなのだ。では、それまで何を語っているかという…

十二人の死にたい子どもたち

冲方丁氏の十二人の死にたい子どもたちを読んだ。ある目的をもって廃棄された病院に集った六人の少年と六人の少女。合わせて十二人。なぜ、彼らの人数を十二人にしたのかは、「怒れる十二人の男たち」に合わせて作者は十二人にしたのだろう。登場人物からは…

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史

磯田道史先生の「司馬遼太郎」で学ぶ日本史を読んだ。タイトルの通り、司馬遼太郎の作品を肴に磯田先生が戦国時代、幕末・明治、そして、司馬遼太郎をして鬼胎と言わしめた戦前の昭和を語る読み物だ。 「国盗り物語」 まず俎上に上がるの国盗り物語だ。磯田…

クロニスタ 戦争人類学者

柴田勝家氏のクロニスタ 戦争人類学者を読んだ。伊藤計劃トリビュート - 隠居日録に収録されていた南十字星の続きの物語だ。 南十字星は、脳にうえつけられた可塑神経回路網でパーソナルな感覚までも自己相を通して共有し、そのデータは平準化され「正しい人…

落語魅捨理全集 坊主の愉しみ

山口雅也氏の「落語魅捨理全集 坊主の愉しみ」を読んだ。『落語魅捨理全集 坊主の愉しみ』山口雅也|講談社ノベルス|講談社BOOK倶楽部に落語とミステリの融合と書いてあるので、どんなものだろうと思って読んだ見た。読む前は、都筑道夫氏の「きまぐれ砂絵…

あなたの人生の物語

テッド・チャンのあなたの人生の物語を読んだ。映画「メッセージ」の原作だ。表題作のあなたの人生の物語を含めて8作収められている。 バビロンの塔 いわゆるバベルの塔の話だが、これとよく似た話をどこかで読んだような記憶があるのだが、何かの勘違いだ…

さらば愛しき魔法使い

東川篤哉氏の「さらば愛しき魔法使い」を読んだ。本書は魔法使いマリィシリーズの三巻目。本巻には以下の四編が収録されている。 魔法使いと偽りのドライブ 弁護士の犯罪 魔法使いと聖夜の贈り物 映画評論家の犯罪 魔法使いと血文字の罠 バーオーナーの犯罪 …

魔法使いと刑事たちの夏

東川篤哉氏の「魔法使いと刑事たちの夏」を読んだ。こちらは魔法使いマリィシリーズの2作目。前作の最後で、マリィーは小山田刑事の家に住むことになったのだが、本書ではその通りに、無駄に大きく近所の悪ガキからは幽霊屋敷と呼ばれている家に家政婦とし…

魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?

東川篤哉氏の「魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?」を読んだ。本書は魔法使いと刑事が登場するミステリーだ。魔法使いが登場してミステリーが成立するのだろうかという危惧もあるが、本書は倒叙ミステリーになっていて、犯人自体は物語の最初で明らかになって…

ニルヤの島

柴田勝家氏のニルヤの島を読んだ。人体通信機構と繋がった生体受像により、人間のありとあらゆる生体活動が記録できるようになった時代では、記録された情報からいつでもその人の人生を叙述することが可能になり、その人が死んだ後にも、その人の人格に触れ…

伊藤計劃トリビュート

伊藤計劃トリビュートを読んだ。TAKさんが、伊藤計劃トリビュートの紹介をしていて、面白そうだったので読んでみた。tak-thinking-room.hatenablog.com 「テクノロジーが人間をどう変えていくか」という問いを内包したSFであること をテーマとした8編が収録…