隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

御奉行の頭の火照り (物書き同心居眠り紋蔵)

佐藤雅美氏の物書き同心居眠り紋蔵シリーズのうちの一作、御奉行の頭の火照り。本作では南町奉行所町奉行である松平伊賀守と主人公の紋蔵との確執を描いている。結局最後には伊賀守は町奉行を更迭されてしまうのだった。

驚いたことは、別シリーズである半次捕り物控えの登場人物である蟋蟀小三郎が紋蔵シリーズに登場してきたことだ。半次捕り物控えも最近は新作が出ていなくて、蟋蟀小三郎をそのまま放っておくのはもったいないと思って、こちらのシリーズに登場させたのだろうか?一編だけの飛び入りかと思ったが、この本では何度も登場しているので、今後も紋蔵シリーズに登場してくる可能性はあると思う。

前作では、居眠りしている場面を見つけられなかったが、今回は2回居眠りしている場面が描かれている。144ページと283ページだ。

それと、佐藤雅美氏は色々調べて書かいて、書いてある内容に信頼がおけるので、単なる娯楽時代小説だと思ってはいないのだが、「手柄の横取り」の最後の所の表現はちょっといただけない。

ふらふらになっている誠十郎の手を取り、上に突き上げて小三郎はいう。(P127)

格闘技ではこのようなことをするが、江戸時代にこのようなしぐさがあったとは考えにくい。また、

それでも小三郎の思いやりが腑に落ちたらしく、ぱちぱちと拍手が起き、やがて拍手の嵐となった。(同P127)

拍手は明治時代になってから西洋から入ってきたもので、江戸時代に拍手をする習慣はない。なので、この説明の文章はちょっとおかしく感じられた。

また、「勘太の恩返し」のP175に

蕎麦屋の椅子がわりの樽に腰を下ろして向かい合った。

とあるが、江戸時代に椅子は一般的ではなく、それの代わりに樽を使うというのも考えにくい。また、この場合当然テーブル的なものを使うことになるが、テーブルもまた江戸時代には一般的ではない。ちょっとこのあたりの表現が引っ掛かった。

 

 

 物書き同心居眠り紋蔵シリーズ

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