初野晴氏の空想オルガンを読んだ。ハルチカシリーズの3作目。本作には「ジャバウォックの鑑札」(アニメ第10話)、「ヴァナキユーラー・モダニズム」(アニメ第4話)、「十の秘密」、「空想オルガン」が収録されている。本書では高校2年生の夏の吹奏楽B部門の東海大会までが描かれている。
「ジャバウォックの鑑札」は吹奏楽の地区大会でハルタが見つけた迷い犬(チベタン・マスティフ)にまつわるストーリ。飼い主が二人現れて、どちらが本物の飼い主なのか?
小説ではP66に「よく表舞台に顔を出せるな」という記述があって、草壁信二郎の過去について何か重大なことがあったことを匂わせているが、本書ではこれ以上何も触れられていない。
「ヴァナキユーラー・モダニズム」は遺産として残されたアパートにまつわる幽霊話と相続税のストーリ。アニメ化したときに結構内容が変えられていた。小説では、謎のアパートを残したのは祖父であったが、アニメではおじさんになっていたり、小説では壁を壊して硬貨を見つけたが、アニメでは大きな鍵が出てきて、それを使って溜まっていた硬貨を取り出したり。
「十の秘密」は県大会の日のストーリ。ここで知り合った清新女子高の吹奏楽部のメンバーととハルチカに起きた謎なのだが、腐った歯磨き粉というのがそもそも想像しにくいのだが、それがウォッカ入りの歯磨き粉というのも、もっと想像しにくかった。それと、女子高生のアルコール依存症という設定もちょっと無理があるのではと感じた。だから、アニメ化されなかったのだろうか。
「空想オルガン」では「ジャバウォックの鑑札」で登場した渡辺の正体が振り込め詐偽犯ということがストーリーのもう一つの軸になっているが(三重県総合文化センターでの吹奏楽B部門の東海大会がもう一つの軸)、振り込め詐欺に加担していたいうのはちょっと唐突過ぎると思った。こちらも、アニメ化されていない。