隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

惑星カロン

初野晴氏のハルチカシリーズの第五作目、惑星カロンを読んだ。本書には、「チェリーニの祝宴 ―呪いの正体―」、「ヴァルプルギスの夜 -音楽暗号―」、「理由ありの旧校舎 -学園密室?-」、「惑星カロン -人物消失-」の四編が収録されている。今回は、各編にサブタイトルが付されている。今のところこれが2015年の9月に刊行された最新刊だ。この物語の最後がどこに設定されているかはわからないが、普門館に行くのが最後だとすると、この時点でシリーズが終わってはいないと思う。少なくとも、ハルタもチカもまだ三年生になっていない。

 

「チェリーニの祝宴 ―呪いの正体―」は呪いのフルートのストーリー。フルートが上達しないチカは使っているフルートが問題だと思い込み、新しいフルートを物色している。そんな時に楽器屋で見つけた中古のフルート。しかし、店主曰く、そのフルートには呪いがあるという。呪いといっても大した呪いではないのだが、その部分を織り込んでのストーリーなっている。

 

「ヴァルプルギスの夜 -音楽暗号―」は音階をアルファベットに割り当てて、そこに言葉を隠す音楽暗号についてのストーリー。この音楽暗号のアイデァはアニメ第一話でも使われているが、ストーリーは全くの別物。この短編では八問めの暗号を解くのに、モスキート音を持ち出していたが、P161で「気をつけてください。八問目は、ハ長調の伴奏が消えて、無音状態で、全音符のメロディだけが流れます」と書いてあり、P162に「……シ………ミ………………ミ………」というように書いてあるので、単純にHEEではなくEとEの間に何かがあるということはわかるのではと思った。

 

「理由ありの旧校舎 -学園密室?-」は逆密室(という表現が抵当かどうかは不明だが)のストーリー。なぜか問題文化部が利用している旧校舎の窓が全開になっていた。幸いなことに盗まれたものは何もないようなのだが、誰が、どのような理由で、そんなことをしたのか。この本の中で設定・ストーリーに無理がなく、一番うまくまとまっていると思った。

 

「惑星カロン -人物消失-」は惑星カロンというフルートの二重奏曲にまつわるストーリー。これにサブタイトルにある人物消失の謎が絡んできて、また、一話目のフルートがここでも絡んでくる。このストーリーはちょっと妙な記述がある。P320「 プログラムソース」という表現は「ソースコード」が適切だと思う。また、ソルフェージュという言葉は一般的なのだろうか?P350に「音楽という不得意な分野」と書いているけれど、P312に「指揮者といってもピアノやソルフェージュも訓練しなければいけないのに」と書かれていて、ちょっと妙な感じがした。また、P396「最後に送ったメールらしき」というのがるが、これは実際の携帯電話の写真なのかどうかが、文章からはわかりにくかった。実際の携帯電話なら、予測変換の候補が見えるだろうし、送られてきたメールというのは、事故後という状況を考えると、メールを送れるのか?という疑問が湧いた。