倉知淳氏の片桐大三郎とXYZの悲劇を読んだ。本作は難聴により引退した大物俳優片桐大三郎が名探偵を務めるミステリーだ。4編収録されていて、
- ぎゅうぎゅう詰めの殺意。満員電車から降りた男が転倒し、死んでしまった。どうやら満員電車の中で、背後から、ニコチンを注射されたようなのだが、これは被害者を狙った殺人なのか、それとも無差別殺人なのか?
- 極めて陽気で呑気な凶器。日本画家が物置部屋となっている納戸の中でウクレレで殴られて死んでいた。でも、納戸の中には他にもっと凶器にふさわしい物、スパナ、バールの類が置かれていた。なぜ、犯人はウクレレを凶器に使ったのか?
- 途切れ途切れの誘拐。若き実業家の八か月になる赤ちゃんが誘拐され、その際、ベビーシッターをしていた女性が殺害された。身代金は三億円。そんな誘拐事件が現在進行している現場に片桐大三郎が乗り込んでいってしまった。
- 片桐大三郎最後の季節。片桐大三郎が名監督小御角監督の思い出話を語る公演の会場に保管していた監督最後のシナリオが盗まれた。推理していくと、耳が聞こえない人物の犯行のように思えるのだが。
三話目の凶器がちょっと無理があるのではないかと思った。また、最後の話は倒叙物になっていて、すっかり騙されてしまった。筆者はなぜ引退した俳優を探偵にしたのかわからないが、それなりに楽しめる作品だった。ただ、上下二段組みで400ページ近くあるので、読むのに時間がかかった。