隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

最長不倒距離

都筑道夫氏の最長不倒距離を読んだ。本書は物部太郎シリーズの2作目だ。この本も過去の何度か読んでいるが、久しぶりに読み返してみた。

一作目の最後の所で、物部太郎の父親が勝手に引き受けてしまった捜査をするために、片岡直次郎と物部太郎は長野県のスキー場にある民宿「鐙屋」に出かけて行った。宿屋の主によると、幽霊が出ていた部屋があったのだが、幽霊が出なくなったらしい。その理由を調べてほしい、できればまた幽霊が出るようにしてほしいというのが依頼内容だ。

ところが到着して間もなく、野天風呂で女性が殺されているのが発見され、状況から鐙屋の客の中に犯人がいるのではないかということになってしまう。そして、タイミングが悪いことには、吹雪が激しくなったために、警察が現場に来れなくなり、物部太郎が殺人事件の捜査をする羽目になってしまったのだ。しかし、物部太郎は例によって、やる気が全然なく、「最長不倒距離を樹立する」と宣言をしてしまう。

 本書の特徴的なところは、メインのストーリーの前に、「口絵がわりの抜粋シーン」として、読者の興味を引きそうなシーンを5つ抜粋していることだ。たしか、都筑氏によると伝記小説などで使われている手法ということだと何かで読んだ記憶にある。最近のテレビ番組もそんな感じで、番組の冒頭で面白そうなシーンを流していて、視聴者の興味を引き付けようとしているのも、同じアイデアだろう。

今回改めて読み直してみて、物部太郎が犯人に対して罠をはめるようなことをしているので、一作目と比べると二作目はちょっと出来が悪いと思った。作中では、提示された謎に一応の解釈を与えているが、なんとなくすっきりした謎ときにはなっていない印象を受けた。

一つ気づかされたのは、物も部太郎が作中に以下のように言っていることだ。

「わからない。どうやってということはわかっても、なぜはわからないっていったろう?なぜをつきとめるのは、大ごとだよ」

 ミステリーを読んでいるとき、「誰が利益を得たのか?」という視点で思考する癖がいつのまにかついてしまったようだ。ストーリ上で事細かに説明されるとは限らない動機から推理を働かせようとしても、正解には結びつかないだろう。

 

都筑道夫作品

 物部太郎シリーズ

七十五羽の烏 - 隠居日録