隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

404 Not Found

法条遥氏の404 Not Foundを読んだ。例外小説で紹介されていた小説の中の一編だ。

池上裕也は2回死んだ。クラスメートの九条晶に告白し、振られ、そして父親の経営する会社のビルの屋上から飛び降りて、自殺した。しかし、なぜか同じ朝を3度繰り返してしまう。自殺したはずなのに、それはなかったことになっている。更に、自殺を回避すると、繰り返しから抜け出て、次の日に進めたのだ。

本書のタイトルが404 Not Foundなので、コンピューター関連の何かだと想像がつき、多分この展開はゲームの中の出来事なのだろうなということに途中で気づいた。多分このあたりは作者も織り込み済みだろう。この世界の構成がどうなっているのかというところが作者のポイントなのだろう。物語の中の登場人物が、作者の意図を超越して動き出すという意味では、ピルランデロの「作者を探す六人の登場人物」の亜流のような気もする。そして、これはゲームなので、複数のシナリオルートが存在し、繰り返しプレイされることになる。

「Not Found」は「これは違う」という意味であることが最後のページで明かされるが、「これは違う」というよりは「シナリオにない」ということではないかと思う。