隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

不道徳な見えざる手

ジョージ・A. アカロフ, ロバート・J. シラーの不道徳な見えざる手(原題 Phishing for phools)を読んだ。本書のまえがきの中に以下のようなことが書かれている。

でも競争力のせいで、ビジネスマンはどうしてもごまかしと詐欺をするようになり、おかげで私たちはいりもしない製品を買い、高すぎる金額を支払ってしまう。そして、ほとんど目的意識を与えてくれない仕事をやらされることになる。あげくに、どうして人生がこんなにおかしくなってしまったのかと不思議に思うことになる。

私事になるが隠居する前の私の心境がまさにこの「目的意識を与えてくれない仕事をやらされること」だった。そして、単に目的意識がないだけでなく、非常にストレスのかかる仕事で、先の見えない状況に嫌気を指してしまい、隠居したのだ。そんなこともあり本書に興味を持って読んでみたのだが、残念ながら、あっと驚くようなことは書かれていなかった。どのようにしてビジネスにおいて詐欺あるいは詐欺的な収奪が行われてきたかを具体例を挙げて記載しているのだが、当たり前ではあるが、本書はアメリカのことについて書かれているので、法律等が違う日本にはそのまま当てはまらない部分も多数ある。ただし、リーマンショックのことについても書かれているので(この時にも詐欺的な収奪が行われていた)、当時を改めて振り返るのにはいいのかもしれない。

それと日本語訳がいかにも英語を翻訳したというような感じの文章になっており、読みにくいところも多々あった。

また、本書の中で「肩の上のサル」という言葉が多数出てくるが、これは多分"monkey on one's shoulder"にちなんだ表現だと思われる。この表現は「取り除くのが困難な厄介な問題」という意味だ。それと、随所に「カモ釣り」という言葉も出てくる。これは多分"phishing"の訳語なのだと思うが、鴨は撃つものであって、釣るものではないので、かなり違和感を感じた。