神山健治監督の映画は撮ったことがない ディレクターズ・カット版を読んだ。本書は以前に出版されていたものに、庵野秀明監督との対談を新たに収録し(その代り押井守監督・中島哲也監督との対談を割愛)し、映画を生む本棚を追加したものだ。
神山監督はなんとなく自分よりずうと若いと思っていたのだが、生年が1966年になっていて、そんなに年が変わらなかったということに、今更ながら気が付いた。
本書の前半の部分は、神山流映画論になっている。企画とは「相乗りできる何か」という定義が面白いと思った。「企画が動き出してしまえば、それをかなえるチャンスはいくらでも僕の手の中に隠されているのだから」とも書かれていて、この文章の「それ」は監督が実現したいもののことだ。このあたりの考え方は押井監督の考え方に近いものがあるのだと思う。しかし、これだと「企画」といのは正に同床異夢なのだと思い知らされる。
それと神山監督の「映画」の定義も興味深かった。単に映画劇場で公開されている作品=映画ではなく、
2時間ほどの時間でゼロから説明して、それが足りているかどうかのメディア
と語っている。そして、更に、
オリジナルの映画というのは、その点でお客さん全員がほぼ同じ状態で作品に接するので、ここで驚いてほしい、ここで気持ちを解放してほしい、という部分がそろいやすいはずだろうと。それが共通の体験を生んで、映画を見たという実感につながるんじゃないかなと思っているんです。
と続けている。