隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

オブリヴィオン

遠田潤子氏のオブリヴィオンを読んだ。本の雑誌の2017年12月号で北上次郎氏が絶賛していた(2ページのうち、本作の紹介で半分を費やしているぐらいの熱の入れよう)ので読んでみたのだが、これはなかなか読ませる小説だった。

物語は吉川森二が出所しているところから始まる。森二が仮出所すして、塀の外に出ると、二人の兄が待っていた。一人は実兄の光一。光一はヤクザダ。競艇のノミヤをやっている。もう一人は義兄の長峰圭介。森二は4年前に妻の唯を殺してしまった。そのため、刑務所に入っていたのだが、出てくるそうそう、なぜ唯を殺したと詰め寄ってくる。そして、「お前を赦さない」ともいう。

4年前吉川森二は妻の唯を殺した、それも娘の冬香の目の前で。妻の唯にも、その兄の圭介にも言葉ではつくせぬ恩があったにもかかわらず。兄の光一のもとで予想屋をやっていた森二を、日の当たる場所に連れ戻してくれたのは二人だった。そのことが、現在進行形のストリー(元の仲間からの嫌がらせ)に絡ませる形で、少しずつ語られていく。そして、なぜ嫌がらせが起きているのかの謎が明らかにされつつ、なぜ事件が起きたのかも明らかにさにされていく。

話は途中結構重苦しい展開になるのだが、最後の所には救いがあることだけは書いておこうと思う。本書の人間関係もかなり破綻しているが、以下のリンクによると、2012年刊行の『鳴いて血を吐く』(KADOKAWA・文庫版は『カラヴィンカ』に改題)はもっとぶっ飛んでいる。
【今週はこれを読め! エンタメ編】深い傷と再生の物語〜遠田潤子『オブリヴィオン』 - 松井ゆかり|WEB本の雑誌

ある日、父親の愛人とその娘・実菓子が同居することになる。実菓子は息をのむような美少女で、後に兄・不動の、さらに後には父親の妻となった女だった...。

どんなストリーかは詳細は全く知らないが、こんな話は怖くて読めない。メンタルがやられそうだ。

オブリヴィオンは忘却を意味する言葉で、そこから赦しという意味もあるようだ。このタイトルの曲のことは本その中でも語られているが、実はトム・クルーズの映画もあったのを今回思い出した。