隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

スチーム・ガール

エリザベス・ベアのスチーム・ガール(原題 Karen Memory)を読んだ。

時代は多分南北戦争後の19世紀末で舞台はアメリカのワシントン準州の架空の都市ラピッドシティ。カレン・メメリーはこの街で縫い子をしていた。縫い子と言っても裁縫の仕事をしているわけではなく、実際は高級娼館モンシェリで働くまだ16歳の娼婦だ。カレンは両親を亡くしてしまい、仕方なく縫い子になることになった。或る日その娼館モンシェリにプリアというインド人の少女とメリー・リー中国人の女アウトローが逃げ込んできたところから物語はスタートする。プリアはインドから騙されてアメリカに連れてこられ、ピーター・バンドルという男の経営する娼館でこき使われていた。メリー・リーは大けがをしており、なぜか娼館にある手術マシーンで治療を受けて回復していくのだが、ピーター・バンドルはプリアを取り返そうとあの手この手で嫌がらせをしかけてくる。

バンドルは人を操ることのできるマシーンやそれと繋がっていると思われる謎の手袋でやりたい放題だ。そして、市長の座も狙っている。一方モンシェリには手術マシーンとか、甲冑の様に着込むタイプのシンガーミシンやら(表紙の絵のように結構大きいようなので、蒸気とディーゼルが動力源)、自動調理器やらがある。プリアとその妹のアーシニーを助けるために行動を起こしたカレンダが、次第にバンドルと全面戦争の様相を呈していく。

この作品は表紙裏のあらすじの最後の「スチームパンクSF」と書かれているが、読んだ印象では、どちらかというと西部劇に近いような気がする。しかし、語り手がカレンという設定になっているので、文体がちょっと独特だ。小説では、当時のアメリカにはないであろうな上記のSF的な物がちりばめられているのでSFということになっているのだろう。特に甲冑タイプのシンガーミシンは、もともとミシンなのだが、この物語ではパワードスーツのような使われ方をしており、カレンはこれに乗り込んで戦うことになる。娼館を舞台にしているが、舞台にしているだけで、彼女たちの縫い子としての仕事にはあまり触れていない。