隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらってもいいですか?(1)

枯野 瑛氏の終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらってもいいですか?を読んだ。
(内容にかなり触れるので)

2017年の6~8月期にテレビアニメとして放送されていた作品の原作小説だ。最終回の方法を見て、後半の所で尻切れトンボの様にして終わったような感じがしたのだが、どうやら小説の方は5巻あり、テレビアニメ化されたのはそのうち3巻までということらしい。アニメを見ていて、どうやら鼓動探知に反応しているので、ヴィレムは生きているようなのだが、
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最終回なので、その後は不明だ。また、このシーンが何を意味しているのか、さっぱり分からない。
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それで、小説の方を読んでみた。

結核文学」という言葉がる。かって結核は不治の病であり、死と隣り合わせの状況であった。その状況が文学という世界において、主人公の男女に悲劇的な結末をもたらすことを約束する重要な要素であった。しかし、医療の発達により、結核ももはや不治の病ではなくなり、「結核」という病を重要な要素としての結核文学は成り立たなくなってしまった。しかし、物語の類型としての結核文学はその後も手を変え品を変え生き延びていくことになる。この作品もそのような作品の一つであろう。

主人公の ヴィレムはかっての準勇者。物語の中では、勇者と神、モンスターが争いを繰り広げていた。ヴィレムは地神との戦いの末、使った魔力の呪詛により石化してしてしまった。500年経過して、偶然発見されて、助け出された。500年の間に世の中話あまりにも様変わりしていた。人類は既に滅びており、ヴィレムは最後の人類の生き残りとなってしまっていた。地上波「獣」が支配する場所となり、「獣」から逃れたモンスターたちは上空に浮かんだ島にある陸地、浮遊大陸群で暮らしていた。
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このキャラクターデザインを見たときは20代の半ばぐらいかと思っていたのだが、小説では肉体年齢は18歳ということだ。

守るべきものを守れず、帰るところを失い世捨て人の様にして生きながら借金を返すヴィレムを心配した友人の緑鬼族のグリッグの勧めで、軍の武器管理庫の管理人に就くことになったヴィレムであるが、武器庫のある島にいたのは人類の少女のような妖精兵「黄金妖精(レプラカーン)」のクトリ、アイセア、ネフレン、…。そして、管理人でもある女喰人鬼のナイグラートであった。彼女ら黄金妖精は「遺跡兵装(ダブウェポン)(かっての勇者が使っていた聖剣)」を扱うための兵器としてそこに暮らしていたのだった。聖剣である遺跡兵装を使えるのは人間の勇者だけであったが、なぜか彼女らは聖剣を使えることになっている。

1巻目ではヒロインである妖精兵のクトリが「妖精郷の門」を開け自爆することが半年前から決まっており、タイムリミットがあるという設定だったが、ヴィレムの助言で自爆せずとも、やがて侵攻してくる「深く潜む六番目の獣(テイメレ)」を倒すことができるということがわかり、戦いに赴く。戦闘には参加できないヴィレムはバターケーキを焼いてクトリを迎えると約束するところまでが描かれる。

黄金妖精については、生まれてすぐ死んでしまった子供の死霊であると説明されているが、人類が消滅してから500年も経過してもまださまよっている死霊なのか、それとも何らかの方法で生み出されたのかは明らかにされていない。聖剣を使える勇者は業を背負ったものにしかなれないという設定になっているが、聖剣を扱える黄金妖精にもまた何か悲劇的な要素があることが示唆されているような気がする。この巻では「獣」の正体はまだ明かされておらず、ただ圧倒的な力を持った何かということぐらいしか明らかになっていない。

ヴィレムに借金があることが冒頭で明かされ、それがために妖精倉庫の番人に就くことになるのだが、借金は石化した体を組成するためにかかった費用であり、友人のグリッグに立て替えてもらっていたようだ。世捨て人の様にして暮らしていたヴィレムだが、ただ守るべきものを守れず、帰るところを失ったからというだけでなく、肉体的にもかなりのダメージが蓄積して、体がぼろぼろであることが途中で明かされている。