隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

コルヌトピア

津久井五月氏の コルヌトピアを読んだ。本作は2017年の第五回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作である。西暦2049年東京都心南部で直下型地震が発生し、荒川両岸と環状八号線沿いの建物が焼失・倒壊し、三万五千人の人々が亡くなった。その災害復興の過程で、被…

エピゲノムと生命

太田邦史氏のエピゲノムと生命を読んだ。DNAが組み合わさることにより、我々を構成する細胞の遺伝情報を記録しているが、DNAの情報は変わらないのに、細胞の性質が変化し、その変化が記録・継承されるという現象がある。これをエピジェネティクスを呼んでい…

平安朝 皇位継承の闇

倉本一宏先生の 平安朝 皇位継承の闇を読んだ。歴史上暴虐・狂気の天皇として記録されている歴代の天皇が何人かいるが、なぜそのような伝説が残っているのを考察した一冊だ。本書のタイトルに平安朝と書かれているが、まず序章で扱われているのは武烈天皇だ…

グリフォンズ・ガーデン

早瀬耕氏のグリフォンズ・ガーデンを読んだ。プラネタリウムの外側 - 隠居日録が面白かったので、デビュー作のこちらも読んでみたのだが、こちらも何とも言えない不思議な小説になっている。こちらではIDA-10がバイオコンピューターとして登場していて、プラ…

司馬遼太郎が描かなかった幕末 松陰、龍馬、晋作の実像

一坂太郎氏の司馬遼太郎が描かなかった幕末 松陰、龍馬、晋作の実像を読んだ。実は私は司馬遼太郎の小説を読んだことがない。子供の頃は歴史小説とか時代小説に興味がなかったのと、ある程度年を取ってからは、読書に割ける時間が限られてしまって、長い小説…

世界の終わりの天文台

リリー・ブルックス=ダルトンの世界の終わりの天文台 (原題 Good Morning, Midnight)を読んだ。この小説はカナダの北極圏にあるバーボー天文台のオーガスティン・ロフタスの物語と人類初の木星有人探査船アイテルの搭乗員のサリー・サリバンの物語が交互に語…

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史(原題 Natural Experiments of History)を読んだ。タイトルの前半だけを見て、「そりゃ、歴史の実験というのは不可能だろう。いったいどういう内容が書かれているのだろう?」と思った。しかし、本書には副…

戦国大名の兵粮事情

久保健一郎氏の 戦国大名の兵粮事情を読んだ。戦国合戦の舞台裏 - 隠居日録を読んだのだが、わかったようなわからないようなもやもやした感じになっていたので、別な本を読んでみたのだ。今回の本は兵糧が中心になっているので、知りたいことがズバリと書か…

不便ですてきな江戸の町

永井義男氏の不便ですてきな江戸の町を読んだ。永井氏は作家・江戸風俗研究家で、本書は小説の体裁をとっているが、どちらかというと江戸の生活・風俗を紹介・解説することが主軸だと思う。物語の主人公は出版社勤務の島辺国広と大学を定年退職し古文書解読…