隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

脳はあり合わせの材料から生まれた

ゲアリー マーカスの脳はあり合わせの材料から生まれた(原題 KLUGE The Haphazard Construction of the Human Mind)を読んだ。この本を読む前は、タイトルから、脳の進化に関して書かれているのだと思っていたのだが、実際は脳の進化の心理学側面(即ち進化心…

気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年 (2)「江戸時代」

田家康氏の気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年の後半。前半はこちら。 江戸時代 寛永の飢饉 寛永十三(1636)年から旱魃による凶作の記録が出てくる。寛永十五(1638)年から寛永十八(1641)年にかけて、畿内から西日本にかけて家畜牛の大量死が記…

気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年 (1)「奈良時代から室町時代まで」

田家康氏の気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年を読んだ。長くなったので2分割とした。後編はこちら。本書を読むと日本では本当に昔から天候不順を契機に飢饉が発生し、多くの人々の命が奪われてきたことに驚く。それから比べると、農業技術の…

魔法使いと最後の事件

東川篤哉氏の魔法使いと最後の事件を読んだ。さらば愛しき魔法使いの最後で雑誌に魔法を使っているところをスクープされてしまい、魔法使いマリィが突然いなくなってしまったので、このシリーズは終わりなのだろうなぁと漠然と思っていたら、続巻が出た。人…

so-netのCHAN-TORUはGASからのアクセスを許さない

so-netのスマホ向けテレビ番組表「CHAN-TORU」がJSON形式でデータを渡してくれるのに気が付いた。それでGASで取得すれば何か面白そうなことができそうだと思って、試しにコードを書いてみた。SONYはレコーダーを作っているからグループ内でこのようなサイト…

ライ麦畑でつかまえて

J.D.サリンジャーのライ麦畑でつかまえて(原題 Catcher in the Rye)を読んだ。色々なところで言及されたり、引用されたり、参照されたりするサリンジャーのライ麦畑でつかまえてだが、今まで読んだことがなかったので、どんなものなのだろうと思い読んでみた…

公卿会議―論戦する宮廷貴族たち

美川圭氏の公卿会議―論戦する宮廷貴族たちを読んだ。藤原道長の日常生活で倉本先生が書かれていた平安貴族に対する現代人のイメージはどうやら50年前に土田直志鎮という歴史学の先生の言葉がオリジナルのようだ。摂関政治期には、重大な問題があれば、陣定と…

いけない

道尾秀介氏のいけないを読んだ。本書は蝦蟇倉市を舞台にした連作短編のミステリーだ。4編納められており、「弓投げの崖を見てはいけない」、「その話を聞かせてはいけない」、「絵の謎に気づいてはいけない」、「町の平和を信じてはいけない」がそれぞれのタ…

記憶術全史 ムネモシュネの饗宴

桑木野幸司氏の記憶術全史 ムネモシュネの饗宴を読んだ。数年前から物覚えが悪くなった。年齢による問題だとは思うのだが、なんとかならないかと思っている。実生活にさほど影響のあるものではないのだが、例えば、朝、洗面をしながら、家を出る前にアレをし…

素数の未解決問題がもうすぐ解けるかもしれない。

ヴィッキー・ニールの素数の未解決問題がもうすぐ解けるかもしれない。(原題 Closing the Gap The Quest to Understanding Prime Numbers)を読んだ。常々思うが素数というのは不思議だ。何が不思議だといって、そのように設計されたわけでもないのに、調べて…

さよならの儀式

宮部みゆき氏のさよならの儀式を読んだ。著者初のSF短編ということで、興味を持ったので、読んでみた。宮部みゆき氏というとやはりミステリー作家という印象がある。収録作品は8編。「母の法律」、「戦闘員」、「わたしとワタシ」、「さよならの儀式」、「星…

聖者のかけら

川添愛氏の聖者のかけらを読んだ。舞台は13世紀前半のイタリア。事の発端はモンテ=フォビオ修道院のマッシミリアーノ院長の許に聖ドミニコの聖遺物(遺骨)がもたらされたことだった。ドミニコ会のカルロなる修道士が5人の会士を伴い訪れ、聖ドミニコの聖遺物…

楽園の真下

荻原浩氏の楽園の真下を読んだ。本作は北上ラジオ第9回で紹介されていた。 www.youtube.com藤間達海はフリーのライターで、目下「びっくりな動物図鑑」という本の執筆中だったのだが、何匹か目のドジョウのような企画で、筆が進まなかった。そんなときに志手…

きまぐれ砂絵

都筑道夫氏のきまぐれ砂絵を読んだ。落語推理 迷宮亭を読んで、久しぶりになめくじ長屋捕り物さわぎシリーズを読みたくなったのだが、これを最初に読んだのは多分今から30年以上前なので、内容に関してはかなり記憶があいまいになっていた。自分の記憶では、…

書評稼業四十年

北上次郎氏の書評稼業四十年を読んだ。これは北上ラジオの特別編で紹介されていた。www.youtube.com上のラジオでも言及されているし、本書のあとがきでも書かれているが、かって中間小説というカテゴリーがあった。私がその言葉を聞いて、意識していたのはた…

いつかの岸辺に跳ねていく

加納朋子氏のいつかの岸辺に跳ねていくを読んだ。本作は北上ラジオの第7回で紹介されていた。 www.youtube.com この回が配信されたのが2019年8月22日で、多分その直後には一度再生していたのだが、実際に本を読むまで半年ぐらい経過していたので、このラジオ…

反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー

ジェームズ・C・スコットの反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー (原題 Against the Grain A Deep History of the Earliest States)を読んだ。本書では、人類がどのように国家を作り上げてきたのかということを考察している。人類が、狩猟採取→農耕…

展望塔のラプンツェル

宇佐美まこと氏の展望塔のラプンツェルを読んだ。北上ラジオの第8回目で紹介されていた。www.youtube.com松本悠一は児童相談所に勤めており、多摩川市の子供支援センターの前園志穂と石井壮太の状況を確認すために、石井家を訪問したのだが、家には誰もいな…

我らが少女A

髙村薫氏の我らが少女Aを読んだ。合田雄一郎シリーズ物の一冊だが、この小説では中心人物ではない。彼はかって起きた事件の現場指揮者として、現在は警察大学の教授として登場する。物語は2017年上田朱美という女性を同棲相手の男が殺害したことから動き出す…

データは騙る 改竄・捏造・不正を見抜く統計学

ゲアリー・スミスのデータは騙る 改竄・捏造・不正を見抜く統計学 (原題 Standard Deviations Flawed Assumptions, Tortured Data, and Other Ways to Lie with Statics)を読んだ。本書でには少し考えれば信頼できないことがわかる、捻じ曲げられた主張を事…

数の女王

川添愛氏の数の女王を読んだ。本書は人々が固有の「運命の数」を持つ世界のファンタジー。しかし、その世界ではなぜか計算が禁じられていた。主人公のナジャは王妃の娘であるが、実の子ではなく、幼少の頃両親が流行り病で亡くなったのを哀れんだ王妃に引き…

クララ・ホイットニーが綴った明治の日々

佐野真由子氏のクララ・ホイットニーが綴った明治の日々を読んだ。このようなアメリカ女性が明治初期に日本に滞在し、少なからず日本に影響を与えていたということを全く知らなかった。更に、彼女は勝海舟の三男と結婚していたというのだから驚きだ。勝海舟…

Iの悲劇

米澤穂信氏のIの悲劇を読んだ。周辺市町村が合併して誕生した南はかま市。その東側に位置した旧・間野市の更に東端に蓑石という村があった。市街地を抜け、交通量の少ない山道を渓流に沿って進んでいくと、左右から暗い山が迫ってくる。道が消えてしまうよう…

生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者

アンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者(原題 The Naturalist)を読んだ。アメリカの北西部、カナダとの故郷に位置するモンタナ州、その山中のフィールドワークをしていた生物情報工学の教授であるセオ・クレイはジョニパー・パーソンズの…

ネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲

大塚已愛氏のネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲を読んだ。時代は19世紀末、場所はロンドン。ハンズベリー男爵家の娘エディス・シダルは父親に頼まれ贈り物の絵画を探すために画廊を訪れいてた。その画廊で最近発見されたルーベンスの「婚礼の日」という作…

クジラアタマの王様

伊坂幸太郎氏のクジラアタマの王様を読んだ。お菓子メーカーの宣伝広報局に勤めている岸は出荷された新商品のマシュマロのお菓子に画鋲が混入していたという苦情を発端に人気ダンスグループの小沢ヒジリと都議会議員の池野内征爾と知り合った。それはあたか…

まほり

高田大介氏のまほりを読んだ。まほりが何を意味するかに触れてしまうと、ネタバレになってしまうので書けない。途中で末保利のことだというのがわかるのだが、実はこれは万葉仮名で書いているだけで、それが何であるかを表していない。この物語は二人の視点…

medium 霊媒探偵城塚翡翠

相沢沙呼氏のmedium 霊媒探偵城塚翡翠を読んだ。推理作家の香月史郎は大学時代のサークルの後輩である倉持結花に頼まれて同行した先で霊媒師の城塚翡翠に会った。霊媒師の彼女は、死者の匂いを感じることができるという。結花は町中の占い師に見てもらってか…

謎解き 聖書物語

長谷川修一氏の謎解き 聖書物語を読んだ。本書のタイトルになっている聖書だが、この本で扱っているのはいわゆる旧約聖書のこと。聖書を実際に読んだことはないが、その中の物語、例えば創世記、ノアの箱舟、バベルの塔、出エジプトなどのエピソードは映画な…

線は、僕を描く

砥上裕將氏の線は、僕を描くを読んだ。本作は北上ラジオの第5回目で紹介されていた。www.youtube.comこの小説は第59回のメフィスト賞の受賞作なのだが、メフィスト賞というとなんとなくミステリーの賞だという風に思い込んでいた。しかし、募集要項には「エ…