かってこの会社にいたものとしては、「なぜこんなことになってしまったのか?」ということにいて興味があった。巷で言われている堺の工場への過剰投資だけなのだろうかと。
それと「4代目の町田社長が退任したとき、なぜ会長になったのか?」というのも疑問だった。シャープは相談役を置いても、会長は置かないというのが暗黙の了解事項だと思っていたからだ。この本に書かれているのが全て真実かどうかは全くわからないが、この疑問に対しては33ページ目で触れられている。
「実は後から、こんなことが 噂になりました。片山がソニーから声をかけられていて、自身が持っている液晶の特許ごとソニーに移るとの話が首脳陣の間でも駆け巡ったようだと。片山は昔から『自分が社長になるんだ』と公言していた人です。町田さんは悩みながらも片山をトップにした。だから本人はシャープの歴史上初めて代表取締役会長になって片山を牽制しようとした。町田さんしか片山をコントロールできる人はいないんです」
こういうわけだったのか。でも、こういうことならば、最初から町田ー片山両氏の関係というのはあまりよくなかったのではないのだろうか?会社の調子がいい時はよいだろうが、悪くなると隙間風が吹くのは、容易に想像できる。
それと、一点不思議に思ったのは、「自身が持っている液晶の特許ごと」の部分だ。通常業務に関連して創出された特許というのは、権利を会社に譲渡するもので、自身が持っているというのはいったいどういうことなのだろうか?
会社の業績が悪くなり、両者の亀裂が決定的になり、闘争が起こり、何の解決もできない6代目の社長と、7代目の社長。繰り返されるリストラ。そして、鴻海に翻弄され、売れる資産は何でも売る状況に。このなりふり構わない資産売却は銀行の指示なのだろうか。
結局、シャープは鴻海に買収されることになったが、そこですべてが終わったわけではなく、そこからが本当の終りの始まるなのだろう。