佐藤雅美氏の町医 北村宗哲を読んだ。本シリーズは今までに4冊出ており、すでに完結している。本シリーズの主人公は北村宗哲という医者で、芝明神前で開業医をしている。宗哲は医者の倅であったが、妾の子であり、本妻に長男がいたため、父が死んだことにより、医学館で勉学を続けられなくなり、身をもち崩し、はずみで人を殺したために、今日はこちら明日はまた向こうと、十六年も逃げ回る生活を余儀なくされた。ある日逃げる生活に嫌気がさした宗哲は、一か八かで、追っ手の田原の喜助(今では通称黒門と呼ばれている)と組んで、追っ手をかけていた江戸の顔役青竜松の松五郎を引退に追い込んだ。このようなことが、連作短編を通じて少しずつ明らかにされていく。
この宗哲の経歴を見ると、同じ著者の啓順シリーズに似たものを感じるが、本シリーズは医者を開業してからのストーリーとなっているので、その点が違っている。
本書においても、江戸時代の医術のことがストーリーに絡めて巧みに解説されており、その点も楽しみの一つであるが、この巻はまだ出だしのような感じで、主要な登場人物の紹介がメインで、まだ物語は動き出してはいない。