隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

喪失

モー・ヘイダーの喪失(原題 gone)を読んだ。本書はハヤカワポケットミステリーの一冊で、版型は新書サイズであるが、上下二段組みになっていて、480ページ以上あるので読みごたえがあった。

ストーリはカージャックの発生から始まる。警察は最初単純なカージャック事件だと思っていた。その地域では同様な事件が二件発生しており、盗まれた車に同乗していた子供はすぐに開放されていたので、今回も同様の事件だと思っていた。しかし、今回は違った。車に乗ったままだったマーサは解放されなかった。そして、犯人から被害者家族に脅迫が起き始めるのだ。警察は捜査の軸足を小児性愛者に移し、何とか犯人に迫ろうとするが、犯人の方が一枚も二枚も上手だった。ナンバープレートの自動読み取りの地点を巧みにかわして逃走したり、被害者家族をセーフハウスに移しても、なぜかその場所が特定されたり。そうしているうちに、第二の被害が発生した。混迷を極める捜査。警察はなかなか犯人に辿りつけない。誘拐されている少女たちの生存確率は時間がたつほど低くなっていく。

ミステリなので、最後に犯人は判明するし、動機も明らかになっている。当然ミスディレクションのためのニセの犯人も出てきて、なかなか読ませるミステリーだった。ただ、ストリーを読んでいて、頭の中で舞台の一つとなっているトンネルの中のバージ船のイメージがうまく構成できなかった。それと、フリー・マーリーの事件がどうなるのか明確に書かれていないので、その点も気になった。