朝井まかて氏の眩を読んだ。NHKで葛飾北斎の娘応為をモデルにしたドラマを放送していて、面白かったので原作を読んでみた。
NHKのドラマは75分ほどの時間なので、原作のほんの一部分を取り出して再構成をしたような印象だ。原作はお栄の結婚生活が破たんするところから描かれている。物語はお栄を北斎、渓斎英泉こと善次郎、甥の時太郎と絡めることで描かれていて、お栄の作とされる絵を生み出した経緯が触れられている。北斎は父であり、絵の師匠で、お栄は弟子の一人として師匠を助ける。しかし、家事は一切しない。北斎が嫌がるので部屋の掃除もしない。食べ物も煮売り屋に頼っているありさまだ。善次郎は同じ絵師で修業も共にしたが、いつも間にか男と女の関係になっている。善次郎は正に風来坊といった感じで、ぶらっとあらわれて、お栄の人生にどっぷりと交わるかと思うと、何年も会わないような状況になったり。絵師をやめて、戯作者になったかと思うと、女郎屋を始めてみたり。時太郎は姉の子ということになっており、姉は病で死んでしまい、時太郎が残された。この時太郎がクズ男だ。本当の悪にも慣れないのだが、悪いことを企んではあっちこっちに借金をこさえて、その支払いを北斎に付け回す。それが、北斎が貧乏だった原因の一つだとしている。北斎が死んだ後にはお栄にたかろうともする。
多分お栄自身のことでわかっていることはあまり多くないので、書かれていることの多くは創作だと思われるが、そんなことを気にせずに楽しめる小説だった。
本の表紙にもなっているが、作者は以下の絵を見たのがきっかけで、本書を執筆したようだ。
ファイル:Yoshiwara Kōshisakinozu.jpg - Wikipedia
江戸末期とはいえ、この光の用い方は非常に独特で、印象的な作品だ。