隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

しあわせな死の桜

竹本健治氏のしあわせな死の桜を読んだ。この本は短編集になっており、12編収録されている。収録作品は、「夢の街」、「彼ら」、「依存のお茶会」、「妖と碁を打つ話」、「羊の王」、「瑠璃と紅玉の女王」、「明りの消えた部屋で」、「ブラッディー・マリーの謎」、「妙子、消沈す。」、「トリック芸者 いなか・の・じけん編」、「漂流カーペット」、「しあわせな死の桜」。本作は第三短編集で、竹本氏の本は割と購入している本なので、第一・第二も手許にあったような気がして、探してみたら、第一短編集の「閉じ箱」はあったが、「フォア・フォーズの素数」はなかった。こちらは未読ということか。第一短編集の「閉じ箱」は収録作品に関しては覚えていないが、何か重苦しい作品ばかりだった記憶があり、著者もあとがきでそのように書いてある。それに比べると今回は、重苦しいところはないが、なんだかわからない作品がいくつか含まれていた。「羊の王」とか、最後の「しあわせの死の桜」とか。

それと、久しぶりにトリック芸者を読んだ気がしたのだが、よく考えたら、トリック芸者ってウロボロス偽書の小説内小説しか存在しなくって、独立した本は出ていなかったのだな。これも途中まではミステリーで進んでいくのに、最後でちゃぷだい返しの様にアンチミステリーになってしまうところが何とも面白い。