隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

私たちが姉妹だったころ

カレン・ジョイ・ファウラーの私たちが姉妹だったころ(原題 We Are Completely Beside Ourselves)を読んだ。

この物語はローズマリー・クックとその家族に起きた出来事の物語である。物語はローズマリーの流儀に従って物語の真ん中か語られ始める。1996年の冬、ローズマリーはカリフォルニア大学デービス校の大学生だった。彼女が最初に語るのは、兄と最後にあったのは10年前、双子の姉ファーンと最後にあったのが17年前という、何か崩壊した家族を思わせるような境遇だった。兄が10年前に失踪したのは、双子の姉がいなくなったことが原因であることが1996年当時に起こって以下とこと織り交ぜながら、徐々に語られていく。双子の姉はなぜかある日突然いなくなり、家族のだれもそのことに触れようとしないという、ミステリアスな状況が語られていく。しかし、注意してほしい。語っているのはローズマリーだ。彼女にも語りにくいことはあり、そういうことはどうしても後出しになってしまう。それに、彼女は事実を意図的に捻じ曲げて語ろうとしているわけではないが、彼女が憶えていることが事実であるとは限らない。我々は自分の都合のいいように記憶を改竄してしまうものだ。特に大きな苦痛を伴う出来事から自分を守るために、その記憶を思い出さないため・忘れるために。

物語は真ん中から語られ出し、そして、双子の姉がいなくなった時であるこの物語の最初が語られ、また真ん中に戻りと、時間軸が前に戻ったり、先に進んだりしながら、徐々に物語の最後に近づいていく。物語が最初に戻るときに、双子の姉の正体が明かされ、なぜそのことに家族が触れないのかも徐々に明らかにされる。物語の最後は全ての人にとっての幸せではないが、原題が示す通り、ローズマリーとファーンは今でも姉妹であることで終わっている。ここで語られているのはフィクションであるが、後半の方を読んでいて、実際に起こったことのような錯覚にとらわれてしまった。