隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

虚談

京極夏彦氏の虚談を読んだ。京極氏の作品を読むのは本当に久しぶりだ。最後に読んだのがいつだったか思い出せないぐらいだ。

この作品は怪談ならぬ虚談だ。物語は怪談のように話として語られていくのだが、ストーリーの中で突然嘘が出てくる。そうすることでストーリーがひっくり返されて、何とも不思議な結末となってしまうのだ。例えば「クラス」というのはこういう話だ。

御木さんが「妹がくんねん」と言う。御木さんはデザイナー系の学校の年上の同級生だ。しかし、御木さんの妹は中学生の時に山崩れに巻き込まれて死んだという。で、訪ねてくる妹の姿が、白髪で、しわくちゃで、年老いているのだが、なぜか中学の制服を着ているという。だからなのか、姿かたちが老いているとはいえ、あれは妹だという。そんな話を聞いた一週間後、やはりデザイン学校の同窓の久米田という先輩に会い、その話をすると、「御木さんは七年前に自殺した」というのだ。全く記憶になく、不思議だと思い、家に帰り昔の写真を調べてみると、御木さんの写真がないのだ。学校の入学時の名簿が出てきたのだが、御木さんの名前は載っていなかった。

このように、物語の中の現実と虚構の境界があいまいになり、怪談のようだった話が怪談ではなくなるのだが、でもなんだか不思議な感じが残るそんな小説になっている。本書は短編集で、九作収録されており、残りのタイトルはそれぞれ、「レシピ」、「チクワ」、「ベンチ」、「キイロ」、「シノビ」、「ムエン」、「ハウス」、「リアル」となっている。