隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

グリフォンズ・ガーデン

早瀬耕氏のグリフォンズ・ガーデンを読んだ。プラネタリウムの外側 - 隠居日録が面白かったので、デビュー作のこちらも読んでみたのだが、こちらも何とも言えない不思議な小説になっている。こちらではIDA-10がバイオコンピューターとして登場していて、プラネタリウムの外側 - 隠居日録の中のIDA-XIの前機種ということなのだと思う。

物語はPRIMARY WORLDと題した一連の物語と、DUAL WORLDと題した一連の物語が交互に並べられている。PRIMARY WORLDの方が最初にあり、東京の大学院の修士課程を修了した主人公が札幌にあるICOTの下部組織の研究所である知能工学総合研究所、通称グリフォンズ・ガーデンに勤務することになり、飛行機でガールフレンドの由美子と赴任してくるところから始まる。登場人物は極端に少なく、主人公、ガールフレンドの由美子、グリフォンズガーデンに勤務する藤野奈緒(プラネタリウムの向こうの登場人物と同じ名前で、同一人物なのだろうと想像する)ぐらい。一方、DUAL WORLDの方は経営学部の学生の主人公とガールフレンドの佳奈の日常が淡々と描かれていくのだが、実はこちらのDUAL WORLDのストーリーはPRIMARY WORLDの主人公がIDA-10上に構築した仮想世界の物語なのだ。

両方ともストーリーがあるような内容な感じで進んでいき、恋愛小説的な感じの展開になっているところもあれば、何とも言えない奇妙な味わいのある会話が繰り広げられるところもある。例えば、天動説・地動説の会話、合わせ鏡の蔵は無限なのか有限なのか、札幌が面的で京都が線的という会話は(こういう話は聞いたことがなかったので)面白いと思った。ただ、情報伝達に用いられるコードが23進法/24進法であるという話はなんだかよく判らない話で、ピンとこなかった(何かもとになるネタがあるのかもしれないが、ちょっと思い浮かばない)。西武を西部と誤変換したのをコンピュータが音韻処理をしている証拠と言っているだが、この意味もよく分からなかった。今となってはさすがに古臭くなっている部分もあるが、これが大学の卒業論文の一部として提出されたということに驚くとともに、それがよく出版されたなとも思う。