隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

てらこや青義堂 師匠、走る

今村翔吾氏のてらこや青義堂 師匠、走るを読んだ。童の神 - 隠居日録が面白かったので、何の前知識なしにこの作品も読んでみた。タイトルから時代物で、人情ものなのだろうかと想像していたのだが、人情ものではなく、エンターテイメントというかアクションものだった。

主人公は坂入十藏。手習い所の師匠で生計を立てているのだが、実は元忍びという設定。最初の方ではメインとなる四人の手習い子である鉄之助、吉太郎、源也、千織の四人のエピソードか語られながら、十藏の過去と江戸の町で起きている何か不穏な忍びの暗躍が描写されていく。そして、ちりばめられていた不穏な動きが後半になって一気に結びついていく。後半は忍術・絡繰りものと言った感じ。こちらもなかなか面白いストーリではあった。

ただ、小説中で使われている言葉が若干妙に感じるところもある。タイトルにある「てらこや」だが、「寺子屋」という言葉は江戸ではあまり使われていなかったはずで、手習い所とか手跡指南が妥当だと思う。また、「隠密往来」というネーミングもどうなのだろうと思った。「往来物」は手習い所の教科書的な書物となっていたが、往復書簡・例文集というような内容なので、「隠密往来」はちょっと妙な感じがした。それと、「武鑑」の事を最初「切絵図」と書いているところ(P26)があるのだが、後半の部分(P263)では武鑑と書かれているので、校正漏れなのかもしれない。更に「門弟」と書くべきところを「門徒」と書いてある箇所が前半部分に数か所見受けられる。