隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

コップクラフト

賀東招二氏のコップクラフトを読んだ。現在からそんなに遠くない未来、太平洋に突如異世界から島が出現した。その島の名前はカリアエナ。この島だけではなく、その周辺には異世界に通じる超空間ゲートも出現した。そのゲートの向こうの異世界には人間だけではなく、妖精や魔物の住む世界、レト・セマーナ(人間の土地)であった。それから15年、二つの世界は争いを経ながらも交流の道を模索し、カリアエナ島には人類側窓口の都市サンテレサ市が建設され、人口200万の都市になっていた。

物語はこの都市の市警の特別風紀班のケイ・マトバとリック・フューリィが囮捜査をしているところから始まる。特別風紀班が扱うのは主に麻薬や武器。それに違法品の密輸・密売とそれにかかわる様々な犯罪だ。今回の取引相手はフィリピン人で、取引の物は「妖精」。妖精を原料に「妖精の粉(フェアリー・ダスト)」という麻薬を作って、違法に取引しているのだ。囮捜査は取引相手の二人組を逮捕して、簡単に終わるはずだった。ところが二人組の一人が手錠を無理やりはずして、リックをぶち殺して、妖精を持ち去り、逃走してしまったのだった。どうやらフィリピン人は魔術的に操られているようなのだ。

そして、妖精捜査のために異世界から準騎士が送り込まれてきた。その名はティラナ・エクセディクカ。女だ。それも若い。セマーナ年齢で27歳、地球年齢に換算すると20歳ぐらい、しかし、外見はローティーンの少女だ。貴族の生まれなのせいか、マトバの事を見下している。もっとも、マトバも宇宙人と蔑んでいる。こんな二人が妖精捜査のために協力しなければならないのだ。

著者があとがきで書いているが、どうやらアメリカの一時間物の刑事ドラマに魔術・魔法とライトノベルのテイストを組み合わせたような小説で、テンポよく進んでいく。事件は冒頭に起きた妖精を奪還するドラマを軸に、その裏に潜む本当の事件があぶりだされるというストーリーになっっている。それと、最初は反発していたマトバとティラナが何とかコンビなっていくところも。ただ、「こちらのXXが実は…」ということが物語の後半あるのだが、ちょっとその必然性・伏線が足りないのではと思ってしまった。それと、「ファミレス」という言葉がたびたび登場するが、アメリカの刑事ものが念頭にあるなら「ダイナー」の方がいいと思った。

本作はシリーズ化されていて、6巻まで出ているので順次読んでいこうと思う。