隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

エステルハージ博士の事件簿

アヴラム・デイヴィッドスンエステルハージ博士の事件簿(原題 The Enquiries of Doctor Eszterhazy)を読んだ。東欧にある架空のスキタイ=パンノニア=トランスバスカニア三重帝国、その首府の大都ベラに住む大博士エンゲルト・エステルハージ。博士号は法学博士、医学博士、哲学博士、文学博士、理学博士、その他もろもろ、幅広い領域にまたがっている。そんな博士の許のもたらされる謎、あるいは博士が市井で出くわす謎、そのような謎をエステルハージ博士が紐解いて、明らかにする。本書はそんな連作短編集だ。本書には、「眠れる童女、ポリー・チャームズ」、「エルサレムの宝冠 または、告げ口頭」、「熊と暮らす老女」、「神聖伏魔殿」、「イギリス人魔術師 ジョージ・ペンバートン・スミス卿」、「真珠の擬母」、「人類の夢 不老不死」、「夢幻泡影 その面差しは王に似て」の8編が収められている。

タイトルに事件簿とついているのでミステリーなのだろうかと読み始めたのだが、ミステリーではなかった。では何なのだろう、幻想小説とかおとぎ噺が近いのではなかろうか?謎が提示されて、エステルハージ博士がその謎を解くために捜査のようなことをするという構成になっているのだが、論理では謎を解くというわけではなく、いろいろな人に話を聞いていると、いつの間にか謎の核心に迫る情報が手に入るという風にストーリが進んでいく。面白くないわけではないのだが、決定的に面白いかと言われればそれもまた違っていて、読み終えた今時点、どのように評価したらいいのかよくわからないというのが正直な感想だ。ただ、ミステリーだと思って読むと、期待を裏切られることだけは確かだ。