隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

早朝始発の殺風景

青崎有吾氏の早朝始発の殺風景を読んだ。いわゆる日常のミステリーの連作短編集。

千葉県の幕張あたりにある架空の沿線を舞台にした日常のミステリーで、登場人物がその沿線にある高校の学生というのが共通の設定になっている。収録作品は、「早朝始発の殺風景」、「メロンソーダ・ファクトリー」、「夢の国には観覧車がない」、「捨て猫と兄妹喧嘩」、「三月四日、午後二時半の密室」とおまけの「エピローグ」の6編。登場人物が二人とか三人でストリーが進行していて、読んでいてなかなか謎が出てこないので、単なるシチュエーションを描いたストーリー展開になっているのだが、後半になって、登場人物のどちらかが何かおかしいことに気付き、「そいえばあの発言が」と思い出して、謎を解明していくパターンになっている。なので、流して読んでいるとあまり気付かずに作者の誘導に引っかかるだろう。謎がなんだかわからないところもうまくできているので、その点に注して読むと面白いと思う。どれもうまいストーリー展開になっている。

ただ、本書のタイトルにもなっている「早朝始発の殺風景」だが、ここの「殺風景」はこの短編に登場する女子高生の苗字になっている。しかし、いくらなんでもそんな苗字はないだろう。