隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

川っぺりムコリッタ

荻上直子氏の川っぺりムコリッタを読んだ。

本書は北上ラジオの第6回目で紹介されていた。ムコリッタとは牟呼栗多のことで、仏典に記載されている時の単位らしい。30分の1日が1ムコリッタ、なので1ムコリッタは2880秒だ。

本の雑誌 Presents 北上ラジオ 第6回 - YouTube

主人公の山田は高校二年生の時母親に捨てられた。二万円を渡され、「お前とはもうこれで終わりだよ」と言われた。当然そんな二万円はアットいう間に無くなってしまう。家賃も払えるわけなく、住むところを追い出され、友達・知り合いのところを転々とする生活を始める。そして、そんな生活をつづけた先にあったのは、詐欺の受け子として逮捕されることだった。二年間刑務所で過ごしているうちに三十歳になり、六十まで生きたとして、まだ半分しか終わっていないことに気付き、愕然とした。なぜなら、明日も今日と変わらない毎日なのだから。そう思ったら死をまじかに感じて暮らしたいと思った。自然災害で日常が突然消えてしまう可能性のある川べりに住めばいいと考えた。いざとなれば川に飛び込むこともできる。出所後に紹介された北陸の塩辛を作る工場に就職した。塩辛工場ならおそらく海が近くにあり、海が近くにあるなら川が流れ込んでいると思ったからだ。

こんな感じで始まる物語が 川っぺりムコリッタだ。この物語では、ムコリッタは山田が塩辛工場の社長から紹介されたアパートの名前で、「ハイツムコリッタ」が正式名称だ。築50年の老朽物件。そこに住む個性的な住人のおかげで少しずつ変わっていく山田が描かれている。特に印象的なのは隣の住人の島田だろう。ミニマリストを自称しているのだが、定職にはついていないようで、アパートの前庭の家庭菜園で野菜を作っている。会った初日からなぜか風呂を貸してくれと言ってくるような厚かましい男で、いつの間にか山田の用意した晩飯も一緒に食べているような男だ。そして、山田も最初は嫌がっていたのにそれを受け入れてしまっているところが何ともおかしい。でも、この島田のおかげで山田の気持ちが少しづつ変わっていくのだ。