隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

いつかの岸辺に跳ねていく

加納朋子氏のいつかの岸辺に跳ねていくを読んだ。

本作は北上ラジオの第7回で紹介されていた。
本の雑誌 Presents 北上ラジオ 第7回 - YouTube

この回が配信されたのが2019年8月22日で、多分その直後には一度再生していたのだが、実際に本を読むまで半年ぐらい経過していたので、このラジオの内容自体が全然記憶に残っていなかった。

本作はフラットと題された章とレリーフと題された章から構成されている。これは森野護と平石徹子という幼馴染の物語だ。フラットでは森野護が平石徹子が訳が分からなくて面白いやつだということが語られていく。徹子は外見はぱっとしないし、何を考えているかよくわからない行動をするような子だった。その二人の出来事を、子供の頃のこと、小学生の時のこと、中学生・高校生の時代のこと、成人式での出来事などなどが、時間が前後しながら語られている。二人は幼馴染で、相手のことを大切には思っているが、恋愛感情はなく、本当に大切な友達思っていた。フラットの最後では、護が「三十になっても、お互相手もいなかったら、付き合ってみるのも悪くないんじゃね?」と言い、徹子が「それも、いいね」というような感じになるのだが、それから1年後、徹子が結婚する予定だという話を護が聞いて、「よかった、おめでとう」と言ってやらねばというところで唐突に終わる。なにか、ぶん投げられたような印象だ。単なる青春ストーリーでもない終わり方だ。

なぜ、北上ラジオで紹介されていたのだろうと思い、もう一度ラジオを聞いた。北上氏は「これは説明できないんだよ」ということを連発している。その答えは次のレリーフにある。実は徹子はある特殊な能力の持ち主だったのだ。レリーフでは今まで何があったのかが徹子の側から語られていく。そして、フラットでの終わりの先を描いていく。これ以上はネタバレになるので書けない。この小説は一読の価値はある。どんなストリーか知りたければ、読むしかないのだ。