隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

きまぐれ砂絵

都筑道夫氏のきまぐれ砂絵を読んだ。落語推理 迷宮亭を読んで、久しぶりになめくじ長屋捕り物さわぎシリーズを読みたくなったのだが、これを最初に読んだのは多分今から30年以上前なので、内容に関してはかなり記憶があいまいになっていた。自分の記憶では、各作品はもっとミステリーとして完成していたのだが、あたらめて読み返してみると、「ミステリーとしてはどうなのだろう?」という印象だ。

本書はなめくじ長屋捕り物さわぎシリーズで、6編収めれれているそれぞれが落語の外題を基にしたストーリーになっている。収められているのは「長屋の花見」、「船徳」、「高田の馬場」、「野ざらし」、「擬宝珠」、「夢金」である。

長屋の花見飛鳥山に花見に出かけたなめくじ長屋の面々が、頼まれて角樽の酒を水に入れ替えた後に、その水を飲んだ花見の一行が毒でばたばたと死んでしまう。いったいどこから毒が紛れ込んだのだろうかという謎が最初に提示されるのだが、これも話の先を読むと大した仕掛けはない。出だしで不思議な状況を提示しているのだが、話が進むとあまり不思議な状況ではなかったことが明らかになるパターンだ。

舟徳は麦藁の蛇に噛まれて船宿の女将が死んだという触れ込みだが、体を調べてみても蛇に噛まれた跡も傷もない。だが、死にざまは蛇の毒のようだが、どのようにして毒を盛られたのかという謎。これはまぁまぁミステリーらしく仕上がっていると思う。

高田馬場は仇討ちの三人が殺された。その背後には何があったのかというストーリーで、落語同様敵討ちは狂言で、彼らは高田の馬場には現れない。そして、敵役の浪人の死体が発見され、敵討ち役の男も殺され、その姉という触れ込みの女が行方伊不明なる。いったい何があったのかという話。

ざらしは落語のように釣竿を借りた八五郎が殺されてしまったところから始まる物語なのだが、八五郎に釣竿を貸した尾形清十郎の正体がストリーの肝になっているが、それが物語からわかるかどうか。ちょっとわからないと思うのだが。

擬宝珠はなぜ若旦那は浅草寺の擬宝珠を舐めたいといっったのか?そしてなぜ殺されたのかというストーリー。

夢金は船頭の金八は増田屋の娘を助けて送り届けたお礼に百両をもらったと思っていたのだが、酒を飲んで目覚めたら、船宿の親方にそれは夢だといわれて途方に暮れた。いったい何があったのだろうかというストリー。これも物語を読んでこの結論に至れるのだろうかと疑問がわいた。

どの作品も伏線が弱く、結論ありきのようなストリー展開になっていると感じた。昔読んだときはそんなに強引だとは思わなかったのだが、何か納得できない感じがしている。