隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

いけない

道尾秀介氏のいけないを読んだ。本書は蝦蟇倉市を舞台にした連作短編のミステリーだ。4編納められており、「弓投げの崖を見てはいけない」、「その話を聞かせてはいけない」、「絵の謎に気づいてはいけない」、「町の平和を信じてはいけない」がそれぞれのタイトルで、本書のタイトルは各短編のタイトルにある「xxxしてはいけない」からとったのだろう。

蝦蟇倉市の自殺の名所になっている弓投げの崖付近のトンネルで交通事故が起きた。前方で停車していた車を反対車線にはみ出してやり過ごそうとしたら、その停車していた車がいきなり動き出し、右側に車を動かしたために、安見邦夫のセダンと接触事故を起こした。事故を隠蔽しようとした前方の車の男は、安見邦夫を救助することなく、逆に暴行を加えてその場から逃げた。それはまさに殺人で、その殺人が別な殺人の連鎖を招いていった。

ネタバレになってしまうのかもしれないが、本書のカバーのところに

  • 第一章 死んだのは誰?
  • 第二章 なぜ死んだの?
  • 第三章 罪は誰のもの?
  • 第四章 ……わかった?

と書かれている。まぁ、一話目はこの通りなのだが、読んでいる時は作者の罠にまんまと引っかかった。これはわざと間違うように書かれた倒叙物だから仕方がないだろう。だが、二話目はなんだかよくわからなかった。「なぜ死んだの?」の理由は明らかにされているが、少年がどのようにして助かったのかがよくわからなかった。三話目の「罪は誰のもの?」は登場人物の中で一番誰が悪いやつかということなのだろうか?これもちょっとよくわからない。殺人犯と誰か繋がっているのかというのが作者が隠しているところで、それは最後まで分からなかった。