隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

流れよわが涙、と孔明は言った

三方行成氏の流れよわが涙、と孔明は言ったを読んだ。本書はSF短編集で表題作の「流れよわが涙、と孔明は言った」、「折り紙食堂」、「走れメデス」、「闇」、「竜とダイアモンド」の5編が収められている。

表題作は明らかにディックの「流れよ我が涙と、警官は言った」のタイトルのもじりで、孔明が泣いて馬謖の首を切ろうとしたが、硬くてきれなかったというところから、なんとか馬謖の首を切ろうとどんどん迷走していくいわゆるバカSFだ。

「走れメデス」のメデスはなんとアルキメデスのメデスで、このように省略可能かどうかはわからないがというか、しないとは思うのだが、シラクサ王から王冠の謎を解いてほしいと頼まれ、セリヌンティウスの工房にやってきたのだが、セリヌンティウスともみ合っているうちにセリヌンティウスが動かなくなってしまい、アルキメデスは走って逃げた。そして、走りながらも王冠の謎を解こうとするこれもバカSFだ。

「竜とダイアモンド」は謎の鹿人が語る竜と没落した伯爵令嬢と竜の物語で、この設定だけだと御伽噺のような感じなのだが、竜は交尾の時になぜか相手にダイアモンド質の物体を埋め込むという設定と、なぜか竜が車を異性だと思い込んでしまったという設定により、これもバカSF的な展開になる。

「折り紙食堂」はちょっとよくわからなかった。「闇」はこの中では最も普通のSF的な小説だと思える。いずれにしても、どれも気軽に読める短編だと思う。