隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

キリオン・スレイの復活と死

都筑道夫氏のキリオン・スレイの復活と死を読んだ。キリオン・スレイシリーズの2冊目。本書には「ロープウエイの霊柩車」、「情事公開同盟」、「八階の次は一階」、「二二が死、二死が恥」、「なるほど犯人は俺だ」、「密室大安売り」、「キリオン・スレイの死」の7編が収められている。

ロープウエイの霊柩車
新潟のスキー場に出かけて行ったキリオン・スレイ一行。ロープウェイの中で気分が悪そうにしていた同行の女性が倒れ、抱き起してみるといつの間にか別人に入れ替わっており、胸を鋭い刃物で刺され、殺されていた。
情事公開同盟
情事公開同盟という差出人から本人しか知りえない私生活の内容の手紙が送られてきたことをモデルのマキから相談を受けたキリオン・スレイ。手紙を預かり、翌日マンションにに訪ねていくと、そのマンションでは殺人事件が起きていた。
八階の次は一階
クリエイト・イットという宣伝会社に勤めている伊藤のもとを訪ねてきた女が飛び降り自殺をしよとしていた。しかし、伊藤はその女と面識はなし、他の会社の人間も知らないという。
二二が死、二死が恥
ある出版社のパーティーでキリオンスレイの前で推理作家の剣光男が突然倒れた。その直前ポルノ作家のグラスを取り違えて、中身を飲んでいたことが分かった。狙われたのはポルノ作家なのか?
なるほど犯人は俺だ
三宅信太朗の推理を聞いて、キリオン・スレイは「なるほど、犯人は俺だ」と言ってしまうところから始まる。弁慶という名前のバーのマダムの衣川まなみが殺されているのを発見したのは、姉だった。用があり何度も電話したが話し中でつながらないので、業を煮やして、店を訪ねると、入り口の錠が降りておらず、二階に上がると殺されていたというのだ。三宅信太朗は現場の状況証拠からキリオンが犯人だと推理したが……。
密室大安売り
三宅信太朗との推理比べ再び。池袋のバー亜羅人のトイレで殺人事件があった。しかも現場は三重の密室だという。トイレは中から錠が降りており、店には刑事がいて、更には外に通じる通路の先には別な刑事が見張っていた。
キリオン・スレイの死
警視庁の捜査一課の天野警部補から青山富雄に電話があり、キリオンが死んだというのだ。大久保のホテルで連れの女を殺して、自殺したらしいという。死ぬ間際にキリオン・スレイと名乗ったという。だが、キリオンがちょうど帰宅して、人違いのようだということがわかり、現場に行ってみると、死んでいる男はキリオンが働いている英会話学校の元同僚ジョージ・トムスンだった。なぜ、ジョージはキリオンの名前を出したのか?

この本のタイトルは「キリオン・スレイの復活と死」だが、最初は「情事公開同盟 : 新キリオン・スレイの生活と推理」として双葉社から1974年に出版されたようだ。解説によると1973年から1974年にかけて一部を除き小説推理に連載されたようだ。その一部がどの短編なのかは解説に書かれていないが、それらは「情事公開同盟」と「二二が死、二死が恥」ではないだろうか。この2編には「二度目の来日だから(P68)」とか「アメリカから再度やってきて(P144)」と書かれていて、一旦キリオンが日本を離れたことが示唆されているのだが、他の作品にはそのような記述はない。よくあることだが、本にまとめるときには雑誌掲載時の順序通りにしないこともあるので、順番が入れ替わっているのではないかと思う。

それと、一冊目は凝った装丁になっていたのだが、この二冊目はなぜか極々普通の作りになっている。