隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

四人組がいた。

高村薫氏の四人組がいた。を読んだ。タイトルに「。」がついているのも最近の流行りを取り入れたのだろうか。四人組というぐらいだから主要な登場人物は4人いる。元村長、元助役、郵便局長、キクエ小母さんの4人。元村長、元助役、キクエ小母の三人はどう見ても後期高齢者だろうし、郵便局長は年齢不詳だが、老人に違いない。その老人たちが郵便局兼集会所にたむろして、日がな一日時間を潰しながら、悪だくみを行っているという短編小説だ。読む前はユーモア小説という触れ込みを見た記憶があったのだが、単なるユーモアではなく、ブラックユーモアだった。まぁ、だが登場人物に人間以外が出てくるのは想定外で、2話目の「四人組、夢を見る」で早くも人外が現れる。どうも、この村にはタヌキが人間に化けて住み着いているようなのだ。ハーブ園で一儲けしているらしい。しかもその狸の親族のメスタヌキが20歳ぐらいの娘に化けて保険の外交員までしているという、訳の分からない状況になっており、これはいったいどういう小説なのだろうとしばし考える羽目に陥った。このあとも四つ足の獣たちが出てきたり、宇宙人が出てきたり、TNB48というタヌキのアイドルグループが出てきたり(ただし、人間には化けているようだ)と訳の分からない展開になる。動くキャベツが攻めてきたかと思うと、地蔵菩薩が相談に来るというカオスの小説だ。

著者の他の小説とは完全に一線を画す小説だが、なんかやりたい放題のような印象を受けた。なぜこのような小説を書いたのだろう?というのが読後の率直な感想だ。