隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

四神の旗

馳星周氏の四神の旗を読んだ。

北上ラジオの第15回目で紹介されていた。

「馳星周の新境地の傑作だ!」と『四神の旗』(中央公論新社)を書評家・北上次郎が熱烈推薦!「北上ラジオ」第15回 - YouTube

この小説は藤原不比等の4人の息子、武智麻呂、房前、宇合、麻呂と長屋王の対立を描いた小説で、いわゆる長屋王の変を扱っている。物語は藤原不比等がなくなったところから始まり、武智麻呂が聖武天皇長屋王が対立するように仕向けて行ったという想定の下に進んでいく。この辺りは記録が残っていないので、実際何があったかは不明だろうから、作者の想像であろうが、物語はそう単純ではなく、色々な人物が、自分たちの一族が有利になるように、色々策を弄しているという風にストーリーが組み立てられていて、なかなか面白い。この小説を読むまで知らなかったのだが、皇族ではないものが皇后になった前例はこの時代以前にはなく、光明皇后(安宿媛)が最初なのだという。この後藤原の一族は娘を次々と天皇に嫁がせていて、皇后にもしているので、この時代というのは、藤原一族が後に権力を握るうえでも重要な時代だったのだなと感じた。しかし、長屋王に勝った藤原兄弟だが、結局は天然痘で全員死んでしまうという歴史の皮肉は何とも言えない。

この作品は、「ならぶ者なき」につながる著者の古代史物らしく、ならぶ者なきは藤原不比等を扱っているらしい。こちらも読んでみようと思った。