隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

オーブランの少女

深緑野分氏のオーブランの少女を読んだ。著者のデビュー短編集で、「オーブランの少女」、「仮面」、「大雨とトマト」、「片思い」、「氷の皇国」の5編が収録されている。それぞれ、異なった味わいの短編なのだが、あえて言えば、最初の「オーブランの少女」と最後の「氷の皇国」は小説の構造が似ている。

前者の「オーブランの少女」はオーブランという庭園の管理人の姉妹が相次いで死んだ。姉は謎の老婆に殺され、妹は自ら命を絶った。妹の残した日記には、このオーブランという庭園の秘密が書かれていて、何があったのかが明かされる。後者の「氷の皇国」はある港町で猟師の網に干からびた死体がかかった。その死体はどこか河の上流から流れ着いてきたようなのだという話になり、かって上流にあったユヌースクという皇国の物語を吟遊詩人が語り始めるのだった。つまり、死体が現れ、何が起きたのかが次に明かされるという構造だ。この2つは面白かった。それと、ある犯罪に加担したためにとんでもないことになってしまう「仮面」も面白かった。