隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

夜の声を聴く

宇佐美まこと氏の夜の声を聴くを読んだ。この作品は北上ラジオの第23回で紹介されていた。

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ラジオの中でも言及されているが、不思議な構成のミステリーだ。連作短編のような感じの作りになっているのだが、それぞれのエピソードにタイトルがついてない。代わりに1、2、という章番号がついているが、章の区切りがエピソードの区切りにはなっていないのだ。前半にある色々なストーリーは全て後半にあるメインのストーリーのためのお膳立てなのではないかという感じがした。前半には3つのエピソードが用意されている。「飛び降りと死んだカブトムシの幼虫」、「タヌキになって帰ってきた死んだ息子」、「別れた母と妹」。前半2つはミステリーになっているが、最後のはミステリーでもない。でも物語に必要なストリーだ。これらの物語は主人公の堤隆太がメインの物語にかかわっていくための仕組みだし、更に言うと、帯にある手首を切った女性も、堤隆太が定時制高校に通うきっかけだし、その定時制高校で出会った重松大吾に巡り合うきっかけとなった出来事だ。つまり、最初からずうと計算された物語が繰り広げられているのだ。メインのストーリーは、帯にある「日常が崩壊する衝撃ミステリー」なのだが、流石に「日常が崩壊する」は言い過ぎだと思うが、よくできたストーリーで面白かった。最初は手首を切った女性と堤隆太の物語なのかと思ったが、この女性は途中からあまり登場しなくなる。役割を終え、必要がなくなるとフェードアウトするのだ。

この小説に関して言及すると、ネタバラシを避けて通れないので、内容に関して書きにくい。でも、ミステリーとしても面白いし、堤隆太の成長物語として読んでも面白いと思う。