隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

向日葵を手折る

彩坂美月氏の向日葵を手折るを読んだ。

本書は北上ラジオの第30回目で紹介されていた。
彩坂美月『向日葵を手折る』は青春小説とミステリーホラーを見事に融合した大注目作だ!【おすすめ本/北上ラジオ#30】 - YouTube

物語は、小学六年生の高橋みのりが山形の桜沢という集落にやってくるところから始まる。みのりの父がくも膜下出血で突然亡くなり、母親の故郷にいる祖母と住むことになり、山形にやって来たのだ。家の近くで、藤崎怜という少年と出会い、「同級生ができてうれしい」という言葉を聞いてみのりはホッとした。彼らが通う小学校は分校で、一番多い六年生でも5人しかいなかった。怜には隼人という幼馴染がいて、同級生の雛子を蹴るのを目撃し、なぜあの優しい怜にこんな乱暴者の幼なじみがいるのだろうといぶかしむのだった。

この物語はみのりが小学六年から中学三年までの出来事が描かれており、ミステリーなのだけれど、青春小説としての比重が大きいのではないかと感じた。これは著者がどのようなことを想定して書いたのかわからないのだが、不思議なことは色々起きる。子供の間で噂されている向日葵男とか、小学校で育てていた向日葵の花ががいつの間に切られていたり、みのりが神社で誰かに押さえつけられたり、怜と隼人の関係などなど。だが、その謎を積極的に解こうとする者がいないのだ。だから、最後の方で謎が解かれるまで、謎は謎のままずーと放っておかれる。北上ラジオの中でも言及されているが、第7章の「事件」といところまで、事件らしい事件は起きないし、謎も解かれないのだ。だからといって、面白くないわけではない。青春小説として読み進めれば、面白いと思うし、解決されなかった謎も、最後の方で解決はされてミステリ的な結末もある。だから、ミステリ的な興味で読むらな、最後の方まであきらめずに読むしかない。ただ、やはり最後の最終章を読むと、青春小説が主なのではないかと思えてくる。