隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

残酷な進化論

更科功氏の残酷な進化論を読んだ。本書は人体をメインテーマにした、進化にまつわる読み物だ。

タンパク質の捨て方

私達が食べる食物の中の有機物は、殆どが糖、脂肪、タンパク質である。このうち糖と脂肪が分解されると主に二酸化炭素と水になり、毒性がないので捨てるとき(体外に排出するとき)は問題ない。だが、タンパク質は必ず窒素を含む物質に分解される。窒素を含む一番単純な物質はアンモニアで、多くの魚類は窒素をアンモニアにして体外に排出している。水が大量にあり、水に溶けやすいアンモニアを排出することは魚類にとっては都合がいいのだろう。だが、陸上生活をしている動物はアンモニアのままでは毒性が強く、いつでも水が使えるわけではないので、尿素にして排出している。尿素アンモニアより水に溶けにくいので、水に溶かすためには大量の水が必要になる。このため、我々はたくさんの水を飲んで、大量の尿を作り尿素を捨てているのだ。
鳥の受精卵は内部で成長をしているので、アンモニアを捨てなければならない。仮に受精卵がアンモニア尿素にした場合、卵の外には排出できないので、内部でたまることになり、尿素の浸透圧が高くなることになる。そうすると、浸透圧を一定にするために内部の水分が尿酸に移動することになる。そこで、卵の中では尿素ではなく、尿酸にしている。尿酸は尿素よりも水に溶けにくいので、浸透圧も高くならない。

タンパク質を分解して、アンモニアを体外に排出することを考えると、魚類→両生類・哺乳類→鳥類・爬虫類と陸上生活に適応しることになるのだ。

目の能力

人体、なんでそうなった? - 隠居日録で人間の目の視神経が内側からつながっているという事が紹介されていたが、これは脊椎動物に共通していることだ。このような構造の利点は眼球の体積が小さくなるという事が本書に書かれていた。更に、魚類・両生類・爬虫類・鳥類の多くが錐体細胞を4種類持っていて、ヒトよりも色を見分ける能力が高い。この点ではヒトの目は未完成に思えるかもしれないが、進化には完成とか未完成もなく環境が変われば、「完成」と思われたものも役に立たなくなる。

全ての生物は「不完全」であり、だからこそ進化が起こる。

と書かれていて、このことがサブタイトルの「なぜ私たちは「不完全」なのか」につながっている。