砂原浩太朗氏の高瀬庄左衛門御留書を読んだ。
本書は北上ラジオの第28回で紹介されていた。
砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』は、まだ1月だけど2021年のベスト1と言いたいくらいの素晴らしい時代小説だ!【おすすめ本/北上ラジオ#28】 - YouTube
高瀬庄左衛門は神山藩の郡方に勤める下級武士で、隠居はしていないが、息子の啓一郎は藩校での成績が優秀だったため、同じく郡方に取り立てられいた。妻は数年前に他界していたが、本人は50歳を越えて、孫でも生まれれば、というような年齢に差し掛かっていた。しかし、息子の啓一郎が郷村廻りの途中で土砂崩れに巻き込まれ、命を落とした。息子の嫁は離縁して、里に返し、庄左衛門一人の生活が静かに始まるのだった。
こんな感じで始まる物語なのだが、やがて藩の中で不穏なことが起こり始めて、大きな騒動に発展していくという感じで進んでいく。物語の筋立ても面白いのだが、文章が非常にうまいと感じた。特にところどころに挟まれる情景の描写が実に生き生きとして感じられた。これは庄左衛門が絵を描くことを趣味としていることから、作者が気にかけて書いたのかもしれない。また、伏線もうまくあちらこちらにちりばめられていて、最後の方でそれが色々とつなっていく所が気持ちがよかった。