隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

詐欺師は天使の顔をして

斜線堂有紀氏の詐欺師は天使の顔をしてを読んだ。

本書は特殊状況ミステリーだ。2つの中編のミステリーが収録されている。子規冴昼は一世を風靡した霊能力者だったが、突然失踪してしまった。マネージャーの呉塚要も八方手を尽くして探したが、その行方は杳として知れなかった。それから3年たったが、要は冴昼の喪失から立ち直れないでいた。霊能力者子規冴昼は呉塚要の演出であり、種のあるマジックのようなものであり、インチキだった。要にとって冴昼は最高の演技者だったのだ。失踪した冴昼から要の許に突然電話がかかってきたところから、この物語始まる。殺人の疑いをかけられて拘束されているというのだ。

特殊状況ミステリーは難しいと改めと思う。特殊状況を無理なくストーリーに絡ませなければならないのだから。一話目の「超能力者の街」はだれしも「キャリアー」という念動力が使える世界で起きた殺人事件なのだが、ただ事件現場のそばのホテルに泊まっていて、超能力を使えないというだけで、冴昼が最重要の被疑者になるところがどうも合点がいかなかった。二話目の「死者の蘇る街」は死者が蘇る街で起きた殺人事件なのだが、こちらも「アクセサリーを死後から持ち帰れない」という設定がなんとなく作り込み過ぎたという印象を受けた。