隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿

澤村伊智氏のアウターQ 弱小Webマガジンの事件簿を読んだ。本書はWebマガジンの駆け出しライターの湾沢陸男が取材中に出くわした事件に関するミステリーだ。短編集で「笑う露死獣」、「歌うハンバーガー」、「飛ぶストーカーとアイドル」、「目覚める死者たち」、「見つめるユリエさん」、「映える天国屋敷」、「涙する地獄屋敷」の7編が収められている。

最初の「笑う露死獣」と最後の「映える天国屋敷」、「涙する地獄屋敷」(これは前編・後編になっている)が面白かった。

「笑う露死獣」は湾沢陸男が子供の頃公園に不思議な落書きがあったことを思い出し、それを取材して一本記事を仕上げようという話なのだ。不思議な落書きとは、

覇覇覇
痴惨痴痴
酔蹴刃魔
汰賭苦那
軀血緋忌
露死獣

というもので、実はこれは暗号になっていて、これを解いていくとんでもない事実にぶち当たるというストーリーになっている。それが結構恐ろしい犯罪になっている。

「映える天国屋敷」は東京の青梅市にある木造家屋の住宅には、摩訶不思議な立像が立ち並び、家の中にはいわゆるニコちゃんマークが無数に描かれている。そして、二階のバルコニーの先に見える裏山の景色。木々の隙間から岩肌を流れ落ちる滝が見えるようになっていて、まことにもって絶景だった。そのことを記事にして、天国屋敷と名づけたら、図らずもネットで話題になり、訪れる人がだんだん増えていった。だが、ある日二階のバルコニーが倒壊して、けが人が出てしまった。「涙する地獄屋敷」では何があったかが語られる。これは今までのストーリーが実は伏線になっているところが実に巧妙だと思った。