隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

薔薇のなかの蛇

恩田陸氏の薔薇のなかの蛇を読んだ。

舞台はイギリスで、ケルトの遺跡のある地方での出来事が最初の「序章」で語られる。その遺跡の祭壇に切断された人体が置かれていたのだ。どう考えてもこれは殺人事件だろう。第一章では場所が変わって、納屋を改造した音楽スタジオの持ち主のヨハンの許を何者かが訪れ、その事件のことについてあれこれ語るところが描かれる。そして舞台はいよいよブラックローズ屋敷に移っていく。ここがこの物語のメインの舞台だ。ここにはレミントン一族が住んでいて、現当主のオズワルドの誕生日の日に、この屋敷で見つかったという宝物を披露するという触れ込みで一族を呼び寄せていたのだ。一族のものは誕生日の2日前から集まってきていたのだが、人々が集まって来て早々、ここでも事件が起きてしまった。林の中から死体が出てきたのだった。

物語はこんな感じで始まり、やがて当主の許に脅迫の手紙が来ていることが明らかになったり、更に遺体の一部が発見されたりと事件が続いていく。当初これは純粋な謎解きのミステリーだと思って読んでいたのだが、九章まで読んでも十章以降で明らかにされる事件の顛末にはとてもじゃないけれど思い浮かばない。謎を解くための情報が足りなすぎると思う。謎解きというよりは、何とも言えない不思議な事件の顛末の語ったといった感じだった。そういう意味でちょっと物足りない物語だった。