隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

統計外事態

芝村裕吏氏の統計外事態を読んだ。 統計外事態という文字列を見て、どういう風に区切るのかちょっとよくわからなかった。知っている単語で見ていくと、「統計」「外事」「態」だ。そうすると、これは/統計/外事/態/と区切るのかとも思えるのだが、それだと意味がよくわからない。しかも最後の「態」が「熊」に見えてきて、そうすると、/統計/外事/熊/で全く意味が通じない。これは/統計外/事態/と区切るのが正解だ。この「統計外事態」は主人公の口癖なのだ。

時は2041年。世の中には感染症が蔓延し、日本は人口減社会が現実のものとなっていた。数宝数成は大学の数学科を卒業してIT企業に入って暗号関係の仕事をしていたのだが、数年後気づくといつの間にか自分が人を率いる立場にいて、どう考えてもその任ではないと、会社を辞めて、「安全調査庁」という役所に統計分析官としてもぐりこんだ。在宅勤務なので、時間に余裕があり、収入増を目指して、スパイの管制業務も行っているが、あくまでも本職は安全調査庁でのデータ分析だ。本日の案件は、静岡の廃村で水の消費量が72000倍に増えている件だ。ネットを駆使して色々と原因を探るがさっぱりわからない。それで、現地に赴いて調査をしようと猫と連れて自転車にまたがって出かけて行ったら、とんでもないことに巻き込まれてしまうのだった。

この本は表紙裏のあらすじに「統計データの矛盾から犯罪を見つけ出す統計分析官」というようなことが書かれていて、おもしろそうだと思って読んでみたのだが、

猫+僕+伊藤くん+裸の子供の群れだと圧倒的に戦力不足感があるけれど、猫+僕+伊藤くん+フォン・ノイマンならSFファン的に見てかなりいい勝負ができる気がする。むしろ味方に猫とノイマンがいると思うと負ける気がしない。これがSFによる統計分析だ。

という程度の統計なので、統計の理論を駆使したハードなSFを期待して読むと、かなりのがっかり感があるし、私の場合はそうだった。ほとんど統計は出てこない。これは好みの分かれる内容だなと思った。そして、なんだかよくわからないストーリーだったというのが率直な感想。