隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

闇に用いる力学 赤気篇

竹本健治氏の闇に用いる力学 赤気篇を読んだ。まさかこの「闇に用いる力学 赤気篇」が21世紀になって20年も経ってから刊行されるとは思わなかった。本書は初版も光文社から1997年に刊行されていて、あとがきで「続巻は書下ろしによって継続していく予定」と書かれていた。なので、数年のうちには続巻が出版されるのだろうとその時は思っていたのだが、実際はそんなこともなく、21世紀になって、存在自体すっかり忘れていた。それが、まさか3部作となってこのいま刊行されるとは全く思いもしなかった。

さすがに20年以上前に読んで本なので、内容に関してはほとんど覚えていなかったが、唯一覚えていたのは豚の飼育場が出てきたことで、その豚が特殊だったという事だけだ。この豚はデンマークの生化学研究所から導入された特殊な豚で、その導入にかかわった男が帰国早々死亡していたことを掴んだある男が、その豚が導入された笠部畜産の土浦工場に潜入するところから物語が始まる。これがプロローグで、この豚の件はその後しばらく放っておかれて、多数目撃されるUFOとか、突然死事件とか、墜落する飛行機・ヘリコプター、失踪する子供、宗教団体の不穏な動き、人食い豹に襲われる事件、その豹を操る謎の巫女、超能力を使う少年少女などなど様々な事柄が脈絡もなく物語投入されてくる。

……とにかく今度のことはいろんなことがいっぺんに重なってきているもんだからどこに本筋があるのかなかなか見えなくて

というセリフが本文中にあるのだが、赤気篇を読み終わった感想はまさにこれだ。この小説はいったいどんな小説なのか、どういうストーリーになるのか今の時点で全くわからない。初版の本には「長編推理小説」と書かれていたが(今回版にはは書かれていない)、それが正しいのかは現時点で全くわからない。