隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

黛家の兄弟

砂原浩太朗氏の 黛家の兄弟を読んだ。架空の神山藩を舞台にした時代小説。時代は宝暦の頃の事と思われる。タイトルにある黛家は神山藩で筆頭家老を勤める家系の家柄で、栄之丞、壮十郎、新三郎の三兄弟がいた。その藩の次席家老の漆原家の娘が藩主の側室になっており、その子を次期藩主にし、藩政を牛耳ろうとしている漆原内記の陰謀に巻き込まれていく黛三兄弟の物語が本書だ。本作は第一部と第二部に分かれていて、第一部は黛三兄弟が陰謀に巻き込まれて、大変な状況になるところで終わり、第二部はそれから12年後から始まる。

ネタバレになるので詳細は書かないが、第一部が終わったところでは、黛三兄弟はとんでもない状況になっている。その状況からどのような再起を図っていくのだろうと、第二部を読み進めた。この小説はある程度の長さがあり、なかなか物語が進まないので、主人公の新三郎が一体どうするのかというのがよくわからない。それは作者の意図でもあるので、物語に付き合うしかない。物語としてはそういう風に進むだろうという方向に進んでいったので、読後にカタルシスはある。それと、高瀬庄左衛門御留書 - 隠居日録を読んだときにも思ったが、間間に挿入される、草木・花、鳥などの交えた情景描写が本作でも非常に魅力的で、物語に彩を添えている。

ただちょっと気になるところがいくつかあった。第二部では主人公の新三郎は30代そこそこだと思うのだが、口調がやけに爺臭くなっている。それと、座敷にに座っている時に腰に刀を差したままでいるような描写があるのだが、それはちとおかしくはないだろうか?あと、わからないのがP369からの展開。彼はなぜ彼に斬りかかったのか?説明がないから、唐突感が否めない。