安野貴博氏のサーキット・スィッチャーを読んだ。本書は第9回ハヤカワSFコンテストの優秀賞受賞作だ。
物語の時代設定は2029年で、近未来という事になる。その時代にはレベル5の完全自動運転が実用化されており、その自動運転のアルゴリズムの開発ベンチャーであるサイモン・テクノロジーの社長である坂本が誘拐されて、首都高環状線内に走る自動走行の車の中に閉じ込められてしまった。誘拐犯人はその一部始終を動画配信サイトで配信しつつ、坂本社長にあることを実行するように迫るというのが物語のあらすじ。自動走行の車にはC4爆薬が積み込まれており、外部から干渉しようとすると、坂本社長も犯人ともども爆発してしまうようになっている。さて、犯人の目的は何か?この窮地を解決して車を止められるか?というのがストリーの肝になっている。
物語は面白いのだけれども、これはSFなのかという疑問もある。時代設定がちょっと先なので、あまり技術的な飛躍もなく、知っているようなことばかりが出てくるので、その点はちょっと物足りなかった。サスペンスとして読むなら十分面白い。