隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

Babel III 鳥籠より出ずる妖姫

古宮九時氏のBabel III 鳥籠より出ずる妖姫を読んだ。前巻の最後で雫は誰かに拉致されたところで終わっていたのだが、拉致された先はファルサスの隣国のキスクで、そこで雫は謎の病の治療をすることになったのだ。その病はその世界の話し言葉と深く関係していてる。その世界では人は生まれつき知っている基本的な語彙があるのだという。だから、それらの語彙は誰に教わるでもなく意味が分かり、話すことができるのだ。しかし、最近基本語を失う子供が現れてきて、それが謎の病なのだという。雫は我々が言葉を覚えるように、教えることで子供に基本語を身につけさせるという、学習という名の治療を子供に試し、それが可能であることを示した。その病を治すことがキスクの冷酷な姫の試練であり、それをクリアして雫は姫の側近として取り立てられることになった。

ここに至って、雫はキスク国に囚われの身から姫の側近へと変わっていくのだが、元の世界に帰るという目的が半ば放棄してしまった状態で物語が進行していく。「このまま帰らないというようにストーリーは変わっていくのか?」と思わせるような展開になっている。この巻のストーリーは物語全体ではどういう位置づけになるのだろう?作者が後書きで書いている「謎の本」のためのストーリーなのだろうか?