隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

八月の母

早見和真氏の八月の母を読んだ。この小説は北上ラジオの第44回で紹介されていた。

大切なことは敵をつくることではなく自分の力で立つことだ!『八月の母』早見和真(KADOKAWA)は2022年のベスト3に入ると断言!【北上ラジオ#44】 - YouTube

「八月は母の匂いがする。八月は血の匂いがする」というようなプロローグから始まるこの小説はかなり不穏な感じがした。北上ラジオで紹介されているように、恵まれない家庭環境で育った子供はどのようにしてその環境から抜け出したのかというような物語で、意志を持って抜け出そうとしなければ、負の連鎖の渦に飲み込まれてしまうだけだろうことは想像がつく。小説の後半はかなり重たい内容になっていて、読んでいてちょっと辛かった。この小説はプロローグ、第一部、第二部、エピローグという構成になっていて、プロローグに登場する「八月は母の匂いがする。八月は血の匂いがする」と言った女性が誰なのかという事が明かされず第一部が進行していく所がある種のストーリーの肝になっている。だから、あらすじは紹介しにくいし、登場人物の名前も書きにくい。ただ、第一部が終わるところで、半分種明かしされるのだが、では何があってどうなったというのがわからないので、そのことを知りたくて第二部を読み進めた。

この小説を読んで強く思ったのは「自分の人生は自分ものだ」ということと、「だから、それを守るためには、厳しい決断をしなければならない」という事だ。