隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

捜索者

タナ・フレンチの捜索者 (原題 The Searcher)を読んだ。本作品は北上ラジオの第46回で紹介されていた。

出たぞ!この本が2022年のベスト1だ! 『捜索者』タナ・フレンチ(ハヤカワ文庫)を信じて読んでくれ!【北上ラジオ#46】 - YouTube

シカゴ警察を辞めて、アイルランドの片田舎に移り住んだカル・フーパーは、廃屋を買い、自分で修理しながら、静かに暮らしていた。ある日から何者かに見られている感じがして、注意深く相手の出方を探っていると、それは子供だった。兄が失踪して行方不明になっているので、探してほしいのだという。カルがアメリカからやって来た元刑事だという事を見込んでの頼みだ。最初は断ったのだが、断り切れずやむを得ず頼みを聞き入れ、何のあてもなく捜査のまねごとを始めるのだった。

この小説は600ページを超える長さで、なかなか物語が動き出さない。物語の前半はカルが家を修理したり、隣人や村人とのあれやこれやのエピソードが語られていて、なかなか物語に進展がない。100ページを過ぎたあたりで、ようやくトレイという名前の子供から兄のブレンダンを探してほしいという話が出てくるが、そこからもなかなか物語の進展がない。なぜならカルはもう刑事ではないので、村人から話を聞くくらいのことぐらいしかできないからだ。しかも、状況から言って、もうブレンダンはこの世にいないか、何らかの理由で村を離れなければならず、帰ってこられないというのが見えているので、ミステリー自体のひねりはあまりないように思えた。

北上ラジオの中では、「ザリガニの鳴くところに」と似たようなところがあるといった話も出ているが、それはどうだろうと思った。たしかに、自然が豊かな地域が舞台になっているというところは共通しているだろう。それと、トレイが置かれている状況が、村から孤立しているというところも似ているだろうが、それ以上には共通点は感じられなかった。読後の感想としては、なんか長い割にはミステリーのひねりがちょっと無くて、物足りなさを感じた。